上院議員バッジをつけていても職務質問

 スコット氏は6歳の時に両親が離婚し、シングルマザーの貧困家庭で育った。生まれつき運動能力が優れており、高校時代は野球選手として活躍、大学にはスポーツスカラーシップを得て入学した。

 南部サウスカロライナ州ではさんざん差別を受けた。車を運転していて何度もパトカーに停止命令を受けた。年に7回は止められたという。

 上院議員になり、議員バッジをつけていても、議会構内でキャピタル・ポリ―ス(議会警察官)に呼び止められた。

 黒人を対象にした職務質問(Racial Profiling)だった。

 それでもスコット氏は保守・共和党員であり続けた。高校時代に白人の恩師に学んだキリスト教の神の下での平等こそが米国憲法の根幹であることがバックボーンにあったからだという。

 今年2月、アイオワ州での遊説の際、スコット氏はこう述べた。

「私(の立候補)を一番恐れているのはリベラル派の極左の人たちだ」

「彼らは、私が減税法案に賛成した時は、私をプロップ(Prop=黒人にしてはあっぱれな奴)と呼んだ」

「私が治安強化のために警察に対する予算を増やした時にはトークン(Token=黒人の端役)だと呼ばれた」

「バイデン大統領を批判するや、彼らは私をニガー(黒人を蔑む言葉)と呼んだ」

「(リベラル派の)こうした中傷に心は乱れ、白人支配をしみじみと感じ、恐れてきた」

「私の人生を振り返ると、彼らのウソを見逃すわけにはいかない。山の頂から深い谷間に至るまでこの国に存在する真実について明らかにしたい」

「会社の重役会議室に、学校のすべての教室に、私たちのメッセージを送る。人の集まる体育館から下町にある教会まで本当の真実を伝えたい」

「共和党と米国は被害者意識に溺れるのか、それとも勝利者であることを選ぶかの岐路に立たされている」

「不平不満をとるのか、(米国の)偉大さをとるのか」

 まさに黒人差別をなくすためだというスローガンを掲げながら、私腹を肥やしている一部のリベラル特権階級に対して挑戦状をたたきつけたともいえる。

 スコット氏にすれば、人種問題の解決はリベラル派の偽善に阻まれている。その化けの皮を剥がねば人種差別はなくならないという体験的信念だった。

 スコット氏の立候補は、そうした勢力に引きずられているバイデン政権に対する挑戦である。