CNNはトランプ起用で起死回生なるか

発言に新味はないが、画期的な政治イベント

 ドナルド・トランプ元大統領が5月10日夜、ニューハンプシャー州ガフタウンで開かれたCNN主催のタウンホール・ミーティング(対話集会)。

 保守系FOX以外の主流テレビに出演するのは起訴後初めて。

 トランプ氏は共和党を支持する市民からの質問に答える形で、2020年の大統領選が不正選挙であり、勝利したのは自分であるという持論を繰り返した。

 バイデン政権下で「米国の犯罪は急増、メキシコとの国境警備体制は破綻した」という持論を展開した。

 最新の世論調査では、「自分(49%)がバイデン氏(42%)を7ポイントもリードしており、米国民は自分の復帰を待ち望んでいる」と強調した。

Biden trails Trump, sees slipping approval rating, Post-ABC poll finds - The Washington Post

 ベテラン政治記者のT氏は、こうコメントする。

「これまでの嘘と事実誤認の繰り返しで新味はないが、CNNとの和解で政治ジャーナリズムの構図を塗り替えるエポックメーキングな出来事だ」

政治討論好きな学生数2000人の単科大学

 会場となったのは学生数2000人足らずのカトリック系単科大学、セント・アンセルム大学(創立1888年)。

 元々、大統領選立候補者同士の討論会の開催には熱心で、2020年2月には民主党大統領候補によるテレビ公開討論会の会場になっていた

 今回、会場に名乗りを上げたことについてジョセフ・ファバザ学長はこう述べた。

「政治は今や分裂している。だからこそこうしたフォーラムを提供した」

「意見交換し、相手の言うことを知ることは選挙民とっては重要だ。本学は1950年以降、公明正大な政治行事の場を積極的に提供してきたのはそのためだ」

「だが、教授陣や学生たちからは批判の声が上がっている」

起訴されただけでなく、ほかにいくつもの刑事裁判を抱えるトランプ氏は、反憲法、反政治体制を唱えている。そうした人物をキャンパスに招き入れるのは学問の府の精神に反する」

 学生有志500人が中止を求める嘆願書を学長に提出した。教授陣の中からは「なぜトランプ氏なのか」と反発する声も出ている。

「5月10日は期末テストの前夜。大学周辺にはすでに反トランプ派やトランプ支持派が集まり始めており、何が起こるか、不安でならない」(大学関係者)状況だ。