(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)
中国の習近平国家主席とウクライナのゼレンスキー大統領が電話会談を行った。4月26日のことだ。ロシアによるウクライナ侵攻後は初めてとなる。習主席は、ロシアとの和平の仲介に前向きな姿勢を示している。
「責任ある大国として、われわれは火事を対岸から眺めたり、火に油を注いだりすることはなく、ましてや利益を得ようと機会を利用することはない」
習主席はそう強調したという。だが、中国にしてみれば、もはや「対岸の火事」とは言っていられないはずだ。
ロシアの侵攻で機能不全に陥った中国の「穀物庫」
中国は、ロシアのウクライナ侵攻から1年の節目となる今年2月24日に、「停戦」と「直接対話」を呼びかける仲裁案を発表している。3月21日には、ロシアの首都モスクワを習主席が訪れ、プーチン大統領と会談。共同声明でロシア側がこの仲裁案を積極的に評価していることから、習主席の訪問の目的は仲裁にあるとされた。
しかし、以前も書いたことだが、中国には背に腹は替えられない事情がある。ウクライナは中国にとっての「穀物庫」の役割を担っているからだ。
ロシアがウクライナに侵攻を開始して、世界には食料危機の懸念が広がった。ウクライナは世界第5位、ロシアは第1位の小麦の輸出国で、両国で世界の小麦輸出量の約3割を占めた。この小麦の供給が不足する恐れから価格が上昇して混乱も起きている。
それにトウモロコシもウクライナは生産量で世界第5位、輸出量は第4位で、ロシアと合わせて世界の輸出の約2割を占めた。ロシアの侵攻で黒海の港が閉鎖され、倉庫に保管されている穀物が運び出せなくなった。
このウクライナからのトウモロコシに輸入の3割を依存していたのが、中国だった。