サンクトペテルブルクでホットドッグの屋台を始めたプリゴジン

 バフムートでは無差別殺戮が行われた。缶詰工場近くのバラックを爆破し、火を放った。中の約60人は悲鳴も、うめき声も上げられなかった。15歳以上は全員、射殺された。証言者の1人は、私服で武器も持たない民間人23人を殺害したという。捕虜のウクライナ兵は銃やマシンガン、スレッジハンマーを使って排除されたが、ほとんどはナイフで喉をかき切られ殺害されたという。

 自らもならず者だったプリゴジンは強盗、詐欺などの犯罪に関与した罪で20代の大半を刑務所で過ごした。出所後、1990年代にサンクトペテルブルクでホットドッグの屋台を始めた。水上レストラン「ニューアイランド」をオープン。当時、副市長だったプーチンが常連客となり、ロシアのエリート層に緊密な人脈を築いた。

2011年11月、自身のレストランで、プーチン首相(当時)に料理を提供するプリゴジン(写真:AP/アフロ)

 プーチンがプリゴジンのレストランやケータリング事業を利用して外国要人との晩餐を開いたことから、プリゴジンは「プーチンの料理番」と呼ばれる。14年、ウクライナ東部ドンバス紛争ではロシア軍を支援するため陰で資金を出し、ワグネルを創設。表面上はワグネルと距離を置いてきたが、ロシア軍の劣勢が明らかになった昨年9月、自身が設立したことを認めた。

 シンクタンク、英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)ヨーロッパのジョアナ・デ・デウス・ペレイラ上級研究員は昨年4月、ワグネルについて「ほとんど目に見えない、公式には存在しない、登録されていない、クレムリンと不明瞭な関係を持つ強力で機知に富んだ私兵だ」と分析している。ロシアでも傭兵行為は非合法だった。