米中対立を緩和するために日本人にできることとは

1.深刻化する米中対立

 米中対立は深刻な状況が続いている。

 ワシントンDCでは中国と西側諸国との対立を専制主義・権威主義VS民主主義というイデオロギー対立の枠組みとして捉え、中国を邪悪な存在と決めつけている。

 冷静な専門家・有識者がそうしたイデオロギーや感情に支配された議論を批判すれば、逆に親中派のレッテルを貼られて厳しい非難の的となる。

 EU主要国がこうしたワシントンDCに代表される米国政府の対中強硬姿勢をナイーブ過ぎると批判しても一切耳を傾けない。

 冷静かつ中立的な視点からの中国に関する議論が封殺されているワシントンDCの現状を第2次世界大戦直後のマッカーシズムの再来のようだと評している米国の有識者は少なくない。

 そうした有識者は、極端な反中感情に支配された現在のワシントンDCの状況はイラク戦争開戦の時に似ていると分析する。

 当時、米国政府はイラクに大量破壊兵器があると決めつけ、事実を検証することなくイラク戦争開戦に踏み切った。

 しかし、戦争勝利後にイラク国内を調査したところ大量破壊兵器はみつからなかった。これにより米国の国際的な信頼は大きく傷ついた。

 現在、米国では多くの人々が中国政府に対して、気球による計画的な米軍基地偵察、ロシアに対する武器供与、2027年までに実施される台湾の武力統一などの疑惑を抱いている。

 現時点ではいずれも明確な証拠が示されていないが、ワシントンDCではこれらがすでに証明された事実であるかのような前提で対中批判が支持されている。

 米国の冷静な専門家・有識者は、ワシントンDCがいったんこうした状態に陥ると暴走が止まらなくなる傾向があると懸念を隠さない。

 一方、中国も西側陣営に対抗し、ロシア、イラン、一部のアフリカ諸国などとの友好関係を誇示している。

 とくにウクライナを侵攻しているロシアに対しては、西側諸国の強い批判が集中している中、中国政府は米国政府を冷戦思考であると批判しているため、米国や欧州諸国の反発を招いている。

 しかも、中国政府がロシア・ウクライナ戦争の和平提案を提示したにもかかわらず、3月20日に習近平主席がロシアのウラジーミル・プーチン大統領だけを訪問し、中露の親密な関係を強調したことは西側諸国の強い反感を買った。

 このように米中双方がそれぞれのイデオロギーの立場に固執して相手を批判し続けているため、両国間の対立は冷静さを欠いた感情的な敵対関係となっている。

 これでは米中両国が二国間で問題を改善することは極めて困難であるように見える。