米空軍の嘉手納基地(写真:ZUMA Press/アフロ)

武器・弾薬の確保よりも大事な「防衛インフラ」の強化

 中国の軍備増強と、その延長線上で近い将来勃発するのではと心配される「台湾有事」に対処しようと、防衛費倍増へと大きく舵を切った岸田政権。タブーの「反撃能力」も解禁し、米製の長距離巡航ミサイル「トマホーク」を大量に買い付け、同種のミサイルの国産化にもゴーサインを出すなど、とにかく“対中シフト”一色に近い。

 しかも突然のウクライナ戦争では「継戦能力」、つまり消耗戦に耐えられる国防の耐久力の大事さを痛感し、自衛隊の弾薬・ミサイルの備蓄の積み増しに大号令をかける。

 確かに継戦能力の強化には、隊員(兵員)や武器・弾薬の確保・備蓄が大事だが、これらのパフォーマンスを高めるための「軍事(防衛)インフラ」の強化も忘れてはならず、岸田政権も柱の1つに据えている。

 軍事インフラとは、航空基地や軍港、弾薬庫、陣地などが象徴的だが、通常は市民生活や経済活動で使う民間の空港や港湾、鉄道、道路、電力・通信網などの一部を、有事の時にすぐさま自衛隊や米軍が使えるように、あらかじめ“軍事仕様”にしているものもある。

 専門用語で「デュアルユース(軍民両用)」と呼ばれ、専守防衛を掲げる日本にはうってつけと思えるが、「軍国主義につながる」との批判も少なくないからか、実際は諸外国と比べ大きく立ち遅れている。

 狭い国土や地域住民の兼ね合いから、基地の新設は非常に難しく、特に先の大戦で戦場となった沖縄では県民感情への細心の配慮が不可欠だ。

 デュアルユース化したインフラの場合、平時は普通の空港や港、道路として一般市民や企業が活用し、いざという時には防衛用として転用する。防衛(軍事)専用の航空基地や軍港、軍事道路の建設に限られた国家予算を注入するのに比べ、はるかに合理的・経済的だ。しかも、近寄りがたい基地とは違って、構築には周辺住民の合意がはるかに得やすいだろう。