米国民の50%は野球ファンではない
「大谷現象」と「岸田ウクライナ訪問」とは、今の日米関係を分析する一つの関連要素にならないだろうか。
日米同盟関係強化・深化に不可欠な要素、つまり両国国民間に育まれてきた相互信頼や価値観の共有が「大谷現象」によってより確実なものになってきたのではないか、という仮説だ。
日米外交を長年第一線で担当してきた元米外交官、D氏はこう指摘する。
「論議するには難しいテーマだな。日本列島はWBCで熱狂したが、米国内は一部の野球ファンが騒いでいるだけだからだ」
「世論調査を見ると、米国民のうち野球が最も好きなスポーツだと答えた人は9%。何といっても一番人気のあるスポーツはアメフトとバスケットボールだ」
「メジャーリーグの観客も年々減り続け、18歳から34歳までの年代で熱狂的な野球ファン(Avid Fan)は17%、「にわかファン」(Casual Fan)は33%。ファンではないと答えた人は50%という数字が出ている」
「野球は今や『白人高齢者の観戦スポーツ』になっている感じがする」
「MLBも今やスター選手の大半は、中南米出身者。かつてMLBでは黒人選手が活躍していたが、優秀な黒人アスリートは近年、野球よりもアメフトやバスケットボール選手になっている」
「確かに大谷選手は凄い。野球ファンでなくとも大谷の名前を知っているはずだ」
「ベーブ・ルースをすでに抜いている。『二刀流』というがルースはボストン・レッドソックス時代だけ。ヤンキースに移籍して以降はピッチングはやっていない」
「大谷選手は日本人野球選手が凄いということをみせつけるだけでなく、マナーやスポーツマンシップでも米国人に好印象を与えている」
「それが米国人の対日観を良くしていることも確かだ。いわば親善大使の役割を演じている」
「ただ、その大谷選手に対する米国の好感度を米国民全体の対日感情に結びつけ、結論づけるのはやや無理筋なのではないのか」
確かにD氏の言うことは「正論」かもしれない。その点は日本人である筆者は冷静に見ておくべきかもしれない。世論調査も欲しいところだ。