岸田文雄と習近平の好対照
「日本」は、3月21日の各紙やオンラインの国際面でも目立っていた。
WBCで「大谷現象」が起こらなければ、このニュースこそ一面トップを飾ったのではないだろうか。
ニューヨーク・タイムズは、「日本の首相、G7首脳として最後のウクライナ訪問」という見出しで、このところ頻繁に引用するラーム・エマニュエル駐日米大使のステートメントを引用してこう報じた。
「岸田氏のウクライナ訪問についてエマニュエル氏は、『岸田氏がウォロディミル・ゼレンスキー大統領との連帯を示している時、中国の習近平国家主席はウラジーミル・プーチン大統領とのパートナーシップを強調していた」
「岸田氏は自由とともにあり、習近平氏は戦争犯罪者の肩を持っている』
(Japan’s Prime Minister Fumio Kishida Visits Ukraine)
ワシントン・ポストは、「岸田氏のキーウ訪問、習近平訪ロと好対照」という見出しでこう報じた。
「アジアの2人の指導者は、ウクライナ紛争で敵味方に分かれている別々の国の首脳に会うという注目するに値する好対照の映像を世界に流した」
「岸田訪問は中国との違いを赤裸々に示すシンボルとなった」
「タイミングは偶然の一致かもしれないが、ロシアによるウクライナ侵攻がアジアにおける安全保障環境をどう変化させるかに光を当てた」
(Japan’s leader, Fumio Kishida, in Kyiv as China's Xi Jinping visits Russia)
ちなみに「世界の良識」とされる英国のBBCはこう報じた。
「ウクライナ紛争がアジアにどう跳ね返るか。それを暗示する最高の事例が出現した」
「岸田氏がキーウに赴き、ウクライナ大統領に揺るぎない支援を約束していた時、習近平氏は、中ロは『偉大なる近隣国家』であり、ロシアとの絆を最優先にすると宣言した」
「中国はこれまでウクライナ紛争では中立を守ると言ってきたが、今や信頼できる仲介役というよりもよりロシア寄りになってきたように見える」
(Japanese and Chinese leaders visit opposing capitals in Ukraine war)
岸田文雄首相が3月21日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)を初めて訪問した。
何度も憶測が流れていたため、米国をアッと言わせはしなかった。米メディアも主流メディアは別として、このニュースが一般大衆に行きわたったとは思えない。
岸田氏はゼレンスキー大統領と会談し、ロシアの侵攻を受けるウクライナに対し「揺るぎない連帯」を表明した。
殺傷能力のない装備支援として3000万ドル(約40億円)を新たに拠出すると伝えた。
5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)にゼレンスキー氏を招待し、オンラインで参加することになった。
日本がG7議長国になる日本の首相としては何としてでもキーウを訪問したかった。他の7か国の首脳はすでに訪問していたからだ。
ゼレンスキー氏も「日本がG7議長国で、国連安保理メンバーの時に会談が実現して非常にうれしい」とその点を強調した。
岸田氏はエネルギー分野などで4.7億ドル(約600億円)の追加支援も表明した。
ゼレンスキー氏は、55億ドル(約7200億円)の財政支援を含む日本のサポートと対ロ制裁に謝意を示し、「日本は非常に重要なパートナー」との認識を示した。
300億ドル(約3兆9000億円)も支援している米国にとっては日本の支援は金額面ではどうということではないが、シンボリックな意味がある。
ジョー・バイデン大統領が歓迎のコメントでも出すかと思ったが、それはなかった。
米政府のコメントは3月21日の国務省報道官が定例記者会見で記者団の質問に答えた発言のみだった。
「日本はG7広島サミット議長国であり、そのスケジュールについては日本政府に聞いてほしい。米国は 岸田首相の歴史的なウクライナ訪問を強く支持している」
「この訪問はウクライナの国民へのサポートの表明であり、国連憲章と同憲章に秘められた普遍的価値への支持の表明である」
(Department Press Briefing – March 21, 2023 - United States Department of State)
目下、主要シンクタンクの外交専門家たちが「岸田・習近平外交の比較研究」を題材に大論文を執筆している最中だろう。