米国民喜ばせた「ショーヘイ・スピーチ」
日本でも大反響を呼んだのが、日米決戦直前に大谷選手がロッカールームでチームメイトを前に言ったショートスピーチだ。
その動画が試合後、米テレビでもオンラインでも流れた。最初にこれを報じたのはロサンゼルス・タイムズのバイリンガル「元大谷番記者」のコラムニスト、日系のディラン・ヘルナンデス氏だった。
彼は大谷選手の郷里・岩手県奥州まで行って花巻東高校の監督に取材している。
(23日付の同紙には「ショーヘイよ、エンジェルズを去れ。ワールド・シリーズに確実に出られるチームに移れ」と助言している)
(Shohei Ohtani's WBC dominance proves he must leave the Angels - Los Angeles Times)
大谷選手は、同年配の日本選手たちにメジャーリーガーとして「一つだけ」助言した。
「僕から一つだけ。(相手チームの選手たちを)憧れる(Respect)のをやめましょう」
「ファーストにポール・ゴールドシュミット(カージナルズ)がいたり、センターを見ればマイク・トラウト(エンジェルズ)がいたり、外野にはムーキー・ベッツ(ドジャーズ)がいる」
「野球をやっていたら誰しも聞いたことがあるような選手たちがいると思う。しかし、憧れてしまっては超えられない」
「僕らは今日、彼らを超えるために、トップになるために来たのだから、今日一日だけは彼らへの憧れを捨てて、勝つことだけ考えていきましょう。さあ、行こう!」
米国人は「Respect」されることが好きだ。
とくに日本人にベースボールを教えたのは米国人だ。それが「野球」になり、高校野球を生み、六大学野球を作り、プロ野球として成長させた。それでもメジャーリーグとは大差があった。
そして今なお大谷選手も含め、日本代表チーム選手もメジャーリーガーに憧れていることを「ユニコーン」が吐露し、同僚に発破をかけていた。
これを喜ばない米国人はいなかった。熱狂的なメジャーリーグ・ファンの隣人、L氏(55)はこう言う。
「まいったね。米国チームはこのショーヘイ・スピーチで負けたね」
「少なくとも日本に負けるものかと敵対心を燃やしていた米国人も日本贔屓というか、公平に試合を見る気になったのだろう。その中にショーヘイがいるんだから」
「俺たちを憧れている日本人選手が真っ向から勝負しようとしているんだから・・・。メキシコやプエルトリコのメジャーリーガーがこんなこと言うかね」
WBCで遺憾なく「二刀流」を披露した大谷選手が率いるドラマに酔いしれた米国人が負けた後もサラリとしているのは、この「ショーヘイ・スピーチ」に負うところ大かもしれない。