2019年横浜DeNAからタンパベイ・レイズとメジャー契約をして渡米した筒香嘉智選手も、自分の考えをしっかり持った選手である。かれは渡米前、TBSの「情熱大陸」(2017.2.26)でこのように発言したのである。まだ25歳だった。それを聞いて、かれに対する印象が一変した。
「やっぱり野球ばっかりだと野球バカになるんで。野球じゃない部分もいろいろ感じていかないと、人として成長しないというか、深みが増していかないんで。政治のことを考えたりとか、日本がいまどうなっているのか、そういうことを常に考えていますね」
筒香はこう思ったのかもしれない。
多くの野球選手は、世間のほめ言葉でもある「野球バカ」という言葉に隠れ、自分でも些かの誇りと多少の自虐をこめて「野球バカ」を自称することがあるが、実体はほんとうに世間を知らないただの野球バカじゃないかと。そしてみんなはそれでいいかもしれないが、自分は嫌だなと思ったのだろう。
かれは現在、テキサス・レンジャーズとマイナー契約をして頑張っている。大谷翔平のような輝きにはまだ及ばないが、応援したい選手である。
「こういう女性が幸せになれる社会に」と願ったCM
5年ほど前、「earth music&ecology」という会社の「『幸せについて~線路沿い』篇」というテレビCMがあった。若い女性が線路沿いを歩いている。そこに女性の声で早口のナレーションが入る。
「人の悪口はいわない。知ったかぶりはしない。ああだこうだ言い訳はしない。自分を過大評価しない。妬まない。自惚れない。思い上がらない。高慢ちきとかありえない。眉間にしわは寄せない。意地悪をしない。ドアは閉める。開けたら閉める。花にはキレイといってあげる。犬は撫でてあげる。笑いたいときは笑う。泣きたいときは泣く。弱きを助け強きをくじく。優しくされたことは忘れない。――わたしは幸せになれますか。なれますよね」
わたしは当時、このCMにいたく感心した。これはさしずめ「自分らしく生きるための、『する・しない』17か条」であろう(そのことが精神力涵養にもなっている)。けれどCMの彼女は、一抹の不安を感じている。
この日本で、しかも若い女性がこんなにはっきりと自分の考えを押し出すのは、幸せにならないのではないか、と。けれどCM作家は、こんな女性が幸せになれるような社会でなければならない、と願ったにちがいない。