東洋水産のCM発表会に出席した俳優の香川照之(2020年9月8日、写真:Pasya/アフロ)

(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)

 香川照之の事件をヤフーニュースで読んだとき、最初に思い浮かんだのは、昔の時代劇で劣情に駆られた大名や悪代官が、腰元や町娘の「アレーそんなご無体、おやめくださいませ」という訴えもものかは、舌なめずり顔で彼女らの帯をくるくるほどく、回転帯ほどきの図だった。まさか香川は、あろうことかそれを現実にやったのか?

 その次に思ったのは、香川はトヨタのCMをしているから、日本で圧倒的な宣伝広告費第一位(4000~5000億円?)を誇るトヨタが、もしかしたらその威力でテレビ局(や新聞)を抑えて、ニュースの鎮静化を図るかもしれないな、ということだった。

 そうでなくても事件そのものは3年も前のことだし、被害者の女性ともすでに示談で話はついて終わっている。それに被害者の訴えは、香川の悪行を止めようとしなかったクラブのママに対してで、香川自身ではない(この点が怪訝だが)。それに香川の地位や人気ぶりから、事は大きくならないのではないかと思われた。

 香川の番組をもっているテレビ局やCMを依頼をしている企業は、そう高をくくったはずである。現に「昆虫すごいぜ!」という番組をもっているNHKは珍しくも、どの局や企業よりもいち早く番組継続を発表したのである。そんな慣れないことをして大丈夫か? とわたしは思った。

セクハラではなく性犯罪

 悪代官の町娘回転帯ほどきの図は、時代劇のなかのお決まりの場面だから安心して見ていられるのである。香川はそれに類することを公然と現実にやったのである。

「香川は、原告の服の中に手を入れ、ブラジャーを剥ぎ取った。剥ぎ取られたブラジャーは、被告及び同行の客3名に次々と渡され、全員がその匂いを嗅ぎ、いろいろと卑猥なことを申し述べた」「そして、訴外香川は原告にキスし、服の中に手を入れ、原告の乳房を直になでまわしたり揉んだりして弄んだ」(『週刊新潮』9月1日号)

 いやいや、おぞましいとしかいいようがない。それに、これが初めてではないような気もする。同行していたという「3名」もどういう連中なのか。