写真:PantherMedia/イメージマート

(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)

 あるネット記事の見出しが目に入ってきた。

「陰鬱な世界情勢、ニュース離れを加速」という見出しである。それを見た途端、やっぱりそうか、日本の若者はウクライナの悲惨さやコロナ関連の陰鬱なニュースが嫌になっているのだな、と思った。

 無理もない。若者よりいくらかは戦争・破壊・虐殺といった内容に耐性のあるわたしでさえ、ここ2か月ほど、ウクライナに関するニュースには嫌気がさしており、避けるようになっているからである。とくにロシア側の一方的な殺戮のニュースや、身勝手な言い分や嘘の言い訳を聞かされると、気分が冷え込み、嫌になるのだ。また真偽不明な様々なニュースにも翻弄され疲れる。

 しかし、日本人の若者、と思ったのはわたしの早とちりだった。ちゃんと見なかったのだが、見出しの「ニュース離れを加速」のあとには「46か国調査」とあったのである。つまり日本の若者だけではない。「46か国」と、規模はもっと大きかったのである(「陰鬱な世界情勢、ニュース離れを加速 46か国調査」2022.6.15、AFPBB News、https://www.afpbb.com/articles/-/3409805)。

 記事によると、「調査は46か国の9万3000人を対象に実施。ニュースを意識的に避けていると回答した人の割合は、2017年の29%から38%に拡大した。ブラジル(54%)や英国(46%)など、ほぼ倍増した国もあった」。

 ニュース離れは国の内外で、以前から指摘されていたが、「気がめいる」原因は、おなじニュースが繰り返し報道されることが挙げられている。またニュースが自分にマイナスにしか作用しないことへの嫌悪感もある。27歳の英国人は「不安をもたらすものや生活に悪影響を与える恐れのあるものは意識的に避けている」「死や災害などに関するニュースはなるべく読まない」と語っている。

 調査のほとんどはロシアのウクライナ侵攻以前に終わっていたが、「侵攻後に調査が行われた5か国では、ニュース離れがより進行していることが示された」。メディアに対する信頼度は平均42%だったが、「ほぼ半数の国で低下」した。なかでも「米国は26%で、スロバキアと並び最低だった」。アメリカ人は4人に1人しかメディアを信用していないのである。

 ようするに世界の多くの人が、ニュース自体にうんざりしているのである。当然だろう。ニュースを見て(読んで)、ただ不快になるだけなのに、なぜ見なければならないのか。見てどうなるのか。せいぜい、ただの物知りになるだけである。