電通本社(写真:西村尚己/アフロ)

(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)

 毎日、テレビではコロナ感染者数が発表されている。変異ウイルスが増えてきて、感染者数は増加する一方で、収束の兆しが見えない。そのつど緊急事態宣言もまん延防止等重点措置も小出しに連発されるが、もう期待されているような効果は出ない。ぐだぐだである。

 それを適用される店舗だけが現実に損害を受け、それ以外の人間は「どこで酒飲めばいいんだ」と、義務でもないのに、のん気に路上で、公園で、他県にまで行って飲んでいる始末である。

 ワクチン接種も遅々として進まない。接種率は先進国のなかでは最低クラスである。菅総理は昨年から2億回分のワクチンは確保した、と得意顔でいってなかったか。

聖火リレー、沿道は楽しそうだが

 他方、まるで信じられないことに、地方では粛々と聖火リレーが続いているのである。深夜0時頃、NHK「聖火リレーデイリーハイライト」が一手販売で報じているのだが、それを見ると、けっこう盛り上がっているのである。選ばれた老若男女のランナーたちはパフォーマンスをやったり(やらされたり?)、10人ほどの伴走者もいたり、沿道では日の丸の小旗を振ったりして、いかにも楽しそうなのである。その小旗だが、いったいだれが配っているのだ? ひょっとして電通か?

島根県奥出雲町を走る聖火リレー(2021年5月16日、写真:岡本良治/アフロ)

 このギャップを納得できる者がいるだろうか。一方では感染者数の増加、他方では聖火リレー。一方では世論の大半がオリンピック中止か延期、他方では既成の事実のごとく五輪開催の準備が進行する。

 聖火リレーに参加した人たちも、やっているときは結構本気だろうが、家に帰って落ち着いてみると、あんなことやってよかったのか、とうまく呑みこめないのではないか。しかしこんな矛盾もこの国では当然のことか。3密を避けよ、といいながら、満員の通勤電車はほったらかしだったのだから。

 昔バブル以前の日本は、経済は一流、国民も一流、しかし政治は三流といわれたものだ。しかしいまは、経済も政治も国民も三流になってしまった感がある。

 東京オリンピックは7月23日が初日。あとちょうど2か月である。だれが東京オリンピックの中止を判断するのか。開催都市の東京都でも、日本政府でもない。IOCだけに中止の権限がある。そして中止してもIOCに賠償責任はない。