また電通が手掛けるイベントを知って、こんなことまでやっていたのかと驚いた。
①オリンピック
②アジア競技大会
③サッカーワールドカップ    
④サッカークラブ選手権
⑤世界陸上選手権
⑥世界水泳選手権
⑦バレーボール世界選手権
⑧ラグビーワールドカップ
⑨博報堂が担当してきたJリーグの選任代理店も2014年から電通のものになった。

 いや、まったく知らなかったなあ。世界の主要なスポーツの国際大会は全部押さえているではないか。赤鉛筆片手に司会を楽しんでいた織田裕二の世界陸上(TBS)も、2019年に異常な盛り上がりを見せたラグビーW杯日本大会も、全部電通の仕切りだったのか。

理不尽でも存続するシステムはある

 前掲書で本間氏はこういっている。「こうしたスポーツイベントは、イベント実施費そのものより、それを支える多くの企業からのスポンサード料や、テレビを中心とするそれぞれの放映権料収入が巨額で、あらゆるメディアとの結びつきを強固にしている」。長年にわたるこの独占は、それらを「運営する人員とノウハウ」が電通以外にはできないようになる。ゆえに「電通が突然機能を停止したら、瞬時にその代わりができる代理店は存在しないのだ。それほど電通は巨大化し、他社との差は広がってしまっている」。

 テレビや新聞などのメディアは、重要な利益源である宣伝広告費を電通に握られていて、電通を批判できない。ある意味、電通はアンタッチャブルなのである。電通になにか不祥事があっても、メディアが報道しなかったり、抑制したりするから、国民は電通がどんな組織で、どんな仕事をしているのかを知らないのである。

 本間氏はいう。世界にはアマゾン、グーグル、アップル、マイクロソフトなど、多くの業界で他社を圧倒するナンバーワン企業は存在する、しかしそれらは「社会的イノベーションの提供という果実を、利用者のみならず全世界の人々に届けている。だからこそ様々な問題や批判を抱えながらも支持されているのだ」。

 トヨタ、松下、ソニー、東芝などの大企業には「国家国民の福祉や反映実現のために会社がある、といった社是があった。だからこれらの企業には、社会への様々な貢献活動の長い歴史がある」「しかし、電通にはそれがない。鬼十則を見ても明らかなように、ひたすら自己の栄達と利益確保を煽り、目標の達成のみを最大価値としている」。稼ぎ出した利益で「日本の社会に貢献しようという文言もなければ意欲もない」「売上高5兆円に迫る超巨大企業は、実に『陳腐で凡庸で利己主義的』な集団なのだ」。

 本間氏は、「第四の権力」といわれるジャーナリズムを超えて、いまや「第五の権力」となった電通を解体ないし分割せよという。いっていることは正しい。

 しかし世界には理不尽なことがわかっているのに、いったん出来あがったシステムがそのまま存続していくことがある。そのシステムに依存し、委託し、委託されるものにとっては、そのシステムが存続していくことが、既得権益を守るのにもっとも楽でスムーズだからである。だれもが改革を望むのではない。「存続するシステム」を欲する者はすくなくないのである。