歴史認識を後回しにしてはいけない

 第2次世界大戦の末期において、日本人も韓国人も同じように、戦時強制動員されました。両者とも同じ扱いだから問題ない、とはいきません。強制性があったということに、変わりはないからです。

 徴用工判決は、日本の「不法な植民地支配」によって傷つけられた人権・人道問題への補償という新しい争点を設定し、1965年の請求権協定で規定された通常の民事的な枠組みとは別に下されたものなのです。

 このような点からも、もともと日本の立場は危ういものでした。

 この危うさに加え、今回の韓国側の「解決策」を受け入れ、日本が不法行為をしたことを自ら認めるようなことをすれば、国際社会に間違ったメッセージを発することにもなります。日本側が賠償金を払わないから良いという問題ではありません。

「日本の不法統治」は歴史の事実ではないことを韓国に認めさせなければ、何の解決にもなりません。それをせずに、なし崩し的に手打ちをしては、解決とはほど遠いと言わざるを得ません。

 歴史認識は決して後回しにされるべきではないのです。

筆者の新著『世界「民族」全史――衝突と融合の人類5000年史』(日本実業出版社)