「徴用」問題の解決策を発表する韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領(写真:AP/アフロ)

(宇山 卓栄:著作家)

日本企業への求償権を放棄したわけではない

 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は3月16日から2日間の日程で、就任後初めて、日本を訪問し、岸田文雄首相と首脳会談を行います。2国間外交のために韓国の大統領が来日するのは12年ぶりのことです。

 これに先立つ6日に韓国政府は、元徴用工訴訟問題で、日本企業の賠償支払いを韓国の財団が肩代わりするという「解決策」を正式発表しました。

 岸田首相はこの発表を歓迎し、徴用工問題解決に向けて、両国政府が事実上、合意した形になっています。   

 しかし、日本がこのような韓国側の「解決策」を認めて首脳会談を行い、韓国と関係改善を図ることは、将来に禍根を残す恐れがあります。

 尹政権は従来から、賠償金を基金や財団が肩代わりするという「代位弁済方式」を提案していました。日本側の実害を軽減するために、妥協的「解決策」を提起しているのだとしています。

 実際は、肩代わりした後で日本企業へ支払いを求める権利(求償権)は放棄されていません。

 また尹政権は、これを「解決策」と言っていますが、「日本人が韓国人を強制徴用し、不法行為を働いた」という主張を変えているわけではありません。