(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)
完全な解決はもはや不可能になった。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領も思い切ったことをしたものだ。これほどのことを決断するには、相当の覚悟が必要だ。私はそこに驚いた。
3月6日、日本戦時下における強制徴用工問題の解決案が韓国政府により発表された。日本側が譲ったところは事実上なく、韓国側が大きく譲歩したと言ってよい。報道によれば、賠償金の支払いを徴用工訴訟で被告になった日本企業に求めない点に、岸田首相は最もこだわったとされる。
韓国の世論調査によれば国民の60%以上が反対しており、解決案撤回へのシュプレヒコールが熱を帯びている。
抗議集会では、元女性徴用工ヤン・グムドク(93)さんのすぐ後ろに野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表の姿があった。韓国の国会は野党が圧倒的多数を占めており、今後、政局を巻き込んでの大混乱が予想される。
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今回の解決案発表は急転直下だった。発表が予定されていると報じられたのは3日ほど前であり、それまでは、解決案がまとまるのは「まだしばらく先」と韓国の専門家たちも口を揃えていた。