白くない灯台というのは、こんなに風格があるものなのか。男木島灯台(おぎじまとうだい)の前に立ったとき、それを最初に感じた。
灰色に淡い茶色がまざったような色だが、それぞれの石、さらに一つの石の中でも、少しずつ色合いが違う。それが作り出す表情の豊かさと暖かさは、とても味わい深い。
そして、過剰ではなく、でも無粋ではないデザインがそれを引き立たせている。
この灯台が最初に点灯したのは約150年前の1985(明治28)年、そして今でも現役だ。そんなに長い間使われているとは思えないほど、風化や劣化を感じさせない。先見の明のある明治の人が残してくれた貴重な“財産”だ。
明治時代に建てられた日本の灯台は、石造りのものが多い。石を積んだあと、耐久性、保守性、視認性などの観点から白く塗装する。
その後、素材の主流はコンクリートに移り、現在ではFRP(繊維強化プラスチック)なども使われているが、色はほとんどが白だ(部分的に赤や黒に塗られていることもある)。
ところが男木島灯台は白く塗装されておらず、石の色がそのまま見えている。なぜだろうか。