さらにその前日の2月6日には、朝鮮労働党中央軍事委員会第8期第4次拡大会議が、平壌の朝鮮労働党中央委員会本部庁舎で開かれた。招集したのは、金正恩総書記だ。
朝鮮中央通信と『労働新聞』によると、その場で2023年度の主要な軍事政治事業と、軍建設の方向に対する展望的な問題が、深く討議されたという。
軍事事業を根本的に改善強化するための機構編制的な対策を立てるための問題、造成された情勢に対処し、人民軍隊の作戦戦闘訓練を拡大強化し、戦争準備態勢をより厳格に完備することに関する問題、現実の発展の要求に合わせて軍隊内務規定の一部条項を新たに改正する問題をはじめ、軍事政治事業において転換をもたらすための一連の実務的業務が研究討議され、決定が採択されたとしている。
まるで奥歯にものが挟まったかのような抽象的な表現だが、この3日間、平壌で一体何が行われ、朝鮮人民軍は今年、どのように変わっていくのか? 朝鮮人民軍の動向に詳しい周辺国の関係者に聞いた。
――今回の一連の「朝鮮人民軍創建75周年記念行事」を見ていて、どんな印象を持ったか?
「金正恩総書記の表情に、余裕と明るさが戻ってきた。再び娘の主愛(ジュエ)をイベントに帯同させたのも、そうしたことの表れだろう。
北朝鮮は今年の国防予算を、全体の15.9%に定めた模様だ。つまり、昨年と同じ割合をキープした」
朝鮮人民軍に「つかの間の余裕」
――金総書記の余裕と明るさは、どこから来ているのか?
「一番大きな理由は、ロシアとの新たな協力関係だろう。昨年末、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、金正恩総書記に電話をかけて、頭を下げた。つまり、北朝鮮にもっと武器輸出などを行ってほしいということだ。
この時、一部を承諾。その見返りとして、ロシアのエネルギー供給を受けることができた。それで朝鮮人民軍に『つかの間の余裕』ができたということだ」
――北朝鮮はロシアに、全面的に加担することはないのか?
「そこは平壌内部でも、意見が割れているようだ。いまこそ全面的にロシアに加担すべきだという意見もあれば、それはリスクが高すぎるという反対意見もある。プーチン大統領が近未来に失脚する可能性も指摘されている」
――金正恩総書記本人は、プーチン大統領とロシア軍の動向を、どう見ているのか?
「冷ややかに見ているようだ。そうでなかったら、とっくにイランのように全面的な支援に乗り出しているだろう。
金総書記は現在、中国の動きを注視している。もしも3月に発足する3期目の習近平政権が、全面的にロシアの側に付くなら、北朝鮮もそれに追随することになるだろう」