北朝鮮の金与正・朝鮮労働党副部長(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 先週末の2月18日夕刻から深夜にかけて、首相官邸や防衛省は、緊張に包まれた。防衛省はその間、計4回も情報発信を行った。そのうち、18時47分に発信された3回目の内容は、以下の通りだ。

<北朝鮮は本日17時21分頃、平壌近郊から、1発のICBM級弾道ミサイルを、東方向に向けて発射しました。詳細については現在分析中ですが、発射された弾道ミサイルは約66分飛翔し、18時27分頃、北海道の渡島大島の西方約200kmの日本海(我が国の排他的経済水域(EEZ)内)に落下したものと推定されます。飛翔距離は約900km、また最高高度は約5,700km程度と推定されます……>

 首相官邸と防衛省が緊張に包まれたのは、今回ばかりはICBM(大陸間弾道ミサイル)が、日本のEEZ内に落下したからに他ならない。もしもわずか250kmほど東にずれていたら、北海道を直撃したことになる。

 そうしたら、何百何千という死傷者が出ていたかもしれない。函館は25万、青森は27万、札幌に至っては200万都市である。

事前計画なしの「奇襲発射訓練」

 当の北朝鮮では、翌19日の日曜日に、朝鮮中央通信が声明を発表した。そこに今回のICBM発射の詳細が語られている。全文は、以下の通りだ。

<大陸間弾道ミサイル発射訓練が、2月18日午後に行われた。ミサイル総局が発射訓練を指導し、訓練には大陸間弾道ミサイル運用部隊の中から、発射経験が豊富な第一赤旗英雄中隊が動員された。

 第一赤旗英雄中隊は、2022年11月18日に新型大陸間弾道ミサイル「火星砲-17」型を発射した有能な偉勲を持っている軍部隊だ。戦略的任務を担当している軍部隊の中で、最も優秀な戦闘力を示す火力中隊だ。

 訓練は、事前の計画なく、2月18日の夜明けに出された非常火力戦闘待機指示と、同日午前8時に下達された朝鮮労働党中央軍事委員会委員長命令書に基づき、不意に組織された。発射訓練命令書には、訓練にミサイル総局第一赤旗英雄中隊を動員し、大陸間弾道ミサイル「火星砲-15」型を利用。不意に奇襲発射訓練を通じて、武器体系の信頼性を再確認し、検証することと同時に、共和国(北朝鮮)の核武力の戦闘準備態勢を刻み込ませ、国家の核抑止力の構想部分の正確な可動性、反応性、信頼性、効果性、戦闘性に対する確信と担保を立証することに対し、詳らかにしたということだ。これには金正恩(キム・ジョンウン)同志の直筆の数表が奉られていた。