白馬にまたがり、白頭山を駆ける金正恩。この光景は北朝鮮住民にどう映るのだろうか(提供:Korean Central News Agency/ZUMA Press/アフロ)

 北朝鮮において、白馬は絶対的な権威の象徴である。

 金正恩は、国家的な重大決定のたびに、白馬に乗って白頭山を駆け上がる姿を披露する。「将軍様、白馬に乗って走る」という歌があるほどだ。

 この白馬の品種は「オルロフ種」という。正式名称「オルロフ・トロッター」(Orlov Trotter)という、ロシアの名馬の血統だ。

 一方、北朝鮮のロイヤルファミリーは「白頭血統」と呼ばれる。

 北朝鮮とオルロフ種との歴史を紐解くと、名馬の毛並みのよさに自らをなぞらえようとする金一族の思いが透けて見えてくる。

 北朝鮮にオルロフ種の馬が初めて入ってきたのは、1972年である。ソ連の第5代最高指導者レオニード・ブレジネフが、金日成の生誕60周年を記念して、オルロフ種の種馬3頭をプレゼントしたのが最初だった。

 この馬をベースに、護衛司令部直属の組織として100人程度から成る騎馬中隊が平壌市寺洞区域美林洞に設けられた。

 騎馬中隊が護衛司令部の配下に組織されたのは意味がある。金日成とともに抗日武装闘争を戦った抗日闘士たちに、乗馬レジャーを楽しんでもらうためであった。

 それを差配したのが金正日だ。