新潮社の会員制国際情報サイト「新潮社フォーサイト」から選りすぐりの記事をお届けします。
ロシアを訪問し、プーチン大統領と会談した金正恩氏(2019年、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(文:名越健郎)

ロシアと北朝鮮、世界で最も危険な両国の関係が緊密化している。ロシアから石油や小麦が送られる一方で、北朝鮮からは戦闘服、弾薬、兵士が提供されるとの情報も。ともに先制核使用の原則を打ち出した2大「ならず者国家」は、戦略的な連携に向かうとの見方もある。

 北朝鮮は11月18日、新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)、「火星17」の発射実験を行い、金正恩労働党総書記が娘を連れて現場に立ち会った。今年に入って北朝鮮が行ったミサイル試射は18日までに34回で、大小合わせて計67発のミサイルを発射。2019年の25発を上回り、過去最高の発射数となった。

 ロシアは10月以降、ウクライナの電力施設など民間インフラへのミサイル攻撃を強化し、発電能力の約50%を破壊。約1000万人が停電生活を強いられた。ロシアは占領地でウクライナ人を大量にロシアに強制連行しており、「特定された子供だけで1万1000人に上る」(ウォロディミル・ゼレンスキー・ウクライナ大統領)という。

 この2つの「ならず者国家」は、ロシアのウクライナ侵攻後、経済・軍事面で関係を強化し、ウクライナ侵攻とミサイル開発で相互支援する動きがみられる。国際的非難を浴び、孤立する朝露の危険な「闇の同盟」を探った。

国連決議で一貫してロシア擁護

 北朝鮮は2020年の新型コロナウイルス拡散後、国境を閉鎖して貿易を制限した。必需品も入ってこなくなったため、平壌の外交団や国際機関スタッフの大部分が出国した。在平壌ロシア大使館も大使ら数人が残るだけだが、今年に入って朝露関係は急速に緊密化した。

 ウクライナ侵攻後、国連総会では「ロシア非難決議」「ロシアのウクライナ4州併合非難決議」「ロシアにウクライナへの損害賠償を求める決議」などの決議案が圧倒的多数で可決されたが、北朝鮮はいずれも反対投票した。一連の採決で毎回ロシア擁護に回ったのは、北朝鮮、シリア、ベラルーシ、ニカラグア程度だ。

 ロシアが2月にドネツク、ルガンスク両州の「独立」を承認すると、北朝鮮も直ちに同調。ロシアが9月に東部、南部の4州を一方的に併合すると、北朝鮮もこれを支持し、ウクライナ政府は報復として北朝鮮と断交した。

 ロシア側も国連安保理で、北朝鮮のミサイル発射への非難決議案や制裁案が提出されるたびに拒否権を行使し、北朝鮮を擁護した。

◎新潮社フォーサイトの関連記事
マハティール凋落が象徴するマレーシア政治の新局面
「アリババ効果」失うソフトバンクG、「攻めの男」孫正義氏に打つ手なし
ロシア人殺到で住宅高騰「ジョージア」で感じた地政学的矛盾