中国人観光客を待ち望む人々

 今回、金門島を訪れた12月中旬の時点では、コロナ禍のため両岸の渡航が停止されており、中国人観光客を見ることはなかったが、県の観光処の統計では、コロナ前の中国人来訪者は年間で延べ50万人前後と、台湾人の来訪者数を凌駕していた。

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 島の人々が期待しているのは、その購買力だ。金門の特産品は高粱酒や、人民解放軍が島内に撃ち込んだ無数の砲弾から鍛造された包丁など。中国人観光客は免税で購入できるとあって、それらの特産品の売上は半端ではないらしい。島内最大規模を誇る免税デパートでも、コロナ前はブランド品を買う中国人で埋まっていたという。中国人は日本や韓国だけではなく、こんな辺境の島にも爆買い観光団を送り続けてきたわけだ。

砲弾から作られた包丁を売る店 ©広橋賢蔵

 観光処の中国担当係長によれば「島内を歩くとドラッグストアが多いのに気付くでしょう。中国人観光客は、中国本土で手に入りにくい台湾製の常備薬やサプリなどを大量に購入していきます。フェイスパックなども売れ筋でした」とのこと。たしかに、島の商店街で最も大きな店舗はたいていドラッグストアだった。

 免税店内にも日本発の「サツドラ」(サッポロドラッグストアー)がテナントに入っていた。2018年に台湾進出を果たしたマツモトキヨシも、金門島への出店を真っ先に検討すべきだったのではないか、と思うほどだ(実際は、台北に1号店を出店している)。

金門には日本のドラッグストアも進出 ©広橋賢蔵

 厦門-金門をつなぐ定期便が再開するまで、しばらくは閑古鳥が鳴く状態が続くだろう。それでも土産店を開く地元の人々は、私のような冷やかし半分の観光客には見向きもせず、爆買いする中国人民たちを待ちわび、彼らの財布に目を輝かせているのだ。

中国側から海底パイブラインで水を供給

 金門の人々は現金をふんだんに落とす中国人客に今後も大いなる期待をかけるわけだが、もうひとつ中国側に期待しているのが、島内へのライフラインの供給である。

 すでに始まっていたのは水の供給。地下水を頼りにしていた島内の水源は常に渇水状態で、地下水を汲み上げ過ぎると、地下水に海水が混じる塩化被害が起こる心配もあった。かといって海水の淡水化はコストがかかりすぎる。

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