政府は抜本的な少子化対策を打ち出せるのか?

年間出生数はベビーブーム時の3分の1以下に

 通常国会が始まり、岸田首相が施政方針演説で「従来とは次元の異なる少子化対策を実現したい」としたうえで、「6月の骨太方針までに、将来的な子ども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示する」との方針を示した。

 とはいえ、「5年間で総額43兆円」を明言している防衛予算とは大違いで、子ども政策関連の予算規模には一切触れないままだった。今後の具体的な政策内容をみなければ分からないが、現時点では“本気度”に確証が持てないと言わざるを得ない。

 少子化対策は歴代の内閣が取り組んできたが、一向に成果が上がっていない。2021年の年間出生数は81万1622人と過去最低となった。2022年はついに80万人を割り込むとみられている。第1次ベビーブーム(1947─49年)のころは年間269万人という年もあったが、その3分の1以下の水準にまで落ち込んでいるのが現状だ。

 80万人というのは日本全体の数字だが、これを全国の自治体レベルで精査してみると驚愕の事実が浮かび上がってくる。

「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(総務省2022年1月1日現在)を検証したところ、全国1700超の自治体のうち、年間出生数(日本人)が10人未満の自治体(市町村)が128もあった。

 “一桁自治体”は30都道府県に点在している。もっとも多いのは北海道で24市町村。次いで長野県13村、奈良県10村、福島県9町村などとなっている。東京都は離島など4村だ。

 もっとも少ないのは長野県平谷(ひらや)村と東京都青ヶ島村の0人。1人は7自治体。北海道の神恵内村と音威子府村、山梨県早川町、小菅村、丹波山村、東京都利島村、岡山県新庄村だ。年間の出生者が1人、2人という状況が続けば、20年間でも出生者総数は20~40人である。とてもじゃないが、次世代社会にはつながっていかない。

 もう一つのデータをみてみよう。日本人住民の自然増減率は、市区部計でマイナス0.48%(前年マイナス0.39%)、町村部計ではマイナス0.87%(前年マイナス0.79%)と、マイナス幅が拡大し、人口減に拍車がかかっている。自然増減率がマイナスの自治体は市区部で778(95.5%)、町村部では887(95.2%)と、あわせて1665の自治体で年間の死亡数が出生数を上回るという“縮み状況”に陥っているのだ。