韓国における大学生の就職活動の様子。就職難も結婚しないの理由の一つ(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(羽田 真代:在韓ビジネスライター)

 韓国メディアの毎日経済がミスリードと思われる記事を掲載した。「日帝強占期時にも耐えたのに今は『世界最下位』『韓国、このまま行けば…』」というタイトルの記事である。

 この記事は韓国の出生率の低さを問題視する内容だ。先に記事の内容をざっくりとご紹介しておきたい。

 統計庁の資料によると、韓国の出生率は毎年最低値を更新し、減少傾向を見せている。全世界で類例のない急速な少子高齢化を経験している韓国の状況を受け、医科大学の教授らが「大韓民国の出生率推移:動向および展望」という論文を発表した。それが、2022年11月号の「Journal of Korean Medical Science」に掲載されて注目を浴びている。

「大韓民国の出生率推移:動向および展望」は、統計庁の人口資料を分析したもので、1925年から2020年までの韓国の人口数、出生児数および出生率の変化を報告し、2060年までの推移を予測したという点で重要な意味を持つという。

 韓国は2020年の総出生児数が27万2400人と初めて30万人を割り込んだ。減少はさらに加速しており、2021年の総出生児数は26万562人と前年度に比べて4.3%減少した。2021年の粗出生率(人口1000人に対する出生数の割合)と、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の推定数)もそれぞれ5.3と0.84で減少し続けている。

 研究結果には、「韓国の出生児数と出生率は日帝強占期から解放時期までは大きな変化がなく、解放後の朝鮮戦争期間には減少した」とある。以後、1960年代末から1970年代初めまでは大幅に増加し、1960〜1980年代に実施された産児制限政策で1980年代減少傾向に変化。1990年代産児制限政策が緩和され、しばらく増加傾向であったが、1997年のIMF通貨危機で急速に減少して、2000年代になってからは深刻な超少子化時代に突入したそうだ。

 これに対し、調査をした教授の1人は「韓国の出生率はOECD国家でも最も低い。人口減少の時代に入っており、今後の人口減少による人口学的な問題から社会経済的な様々な問題が引き起こされる深刻な状況だ。これを克服するために、政府も多角的な法案を用意し克服のための努力が必要だ」と説明した。

 ここで筆者が気になったのが記事のタイトル「日帝強占期時にも耐えたのに」と「今回の研究によると、韓国の出生児数と出生率は日帝強占期から解放時期までは大きな変化がなく、解放後の朝鮮戦争期間には減少した」という部分だ。