ベトナムは中国の鉄道乗り入れを警戒

 また中国はベトナムとは2つの路線で結ばれている。ひとつは、中国雲南省の昆明から同省・河口を経て、ベトナムのラオカイ、ハノイ、港湾都市ハイフォンに至る路線だ。この路線は、もともと仏領インドシナ時代に建設された滇越鉄道で、レール幅は1000ミリ、いわゆるメーターゲージの路線。ただ老朽化も進んでいるため、現在は中国-ベトナム間の運行はほぼ行われていない模様で、中国側は1435ミリの標準軌へのリニューアルを進めている。

 もうひとつは、中国の広西チワン族自治区南寧市とハノイ市のザーラム駅を結ぶ路線である。こちらは中国側は標準軌、ベトナム側はメーターゲージだったが、ベトナム側が1000ミリの列車にも1435ミリの列車にも対応できるよう、レールを3本設置する三線軌条にすることで、中国からの乗り入れを可能にしている。

 こうしたこともあり、中国はメーターゲージが主流のベトナムに、1435ミリの標準軌に変更するようたびたび求めている。

 昨年秋、中国の習近平主席とベトナム共産党のグエン・フー・チョン書記長は北京で会談しているが、会談後に発表された「中越の全面的な戦略的協力パートナーシップのさらなる強化と深化に関する共同声明」にも、<ラオカイ-ハノイ-ハイフォンの標準軌鉄道計画の見直しをできるだけ早く完了する>と明記されていた。

 中国は、ベトナム最大の港湾都市ハイフォンへ続く鉄路を確保したがっているのだ。しかしそのためには、手前にある首都ハノイを通過することになる。ベトナム政府にとってみれば、これは安全保障上の大きな問題になる。