(井元 康一郎:自動車ジャーナリスト)
カー・オブ・ザ・イヤーで軽自動車初の大賞を獲得
2022年6月にデビューした軽規格BEV(バッテリー式電気自動車)の日産自動車「サクラ」/三菱自動車「eKクロスEV」。軽自動車としては230万円台~と高価だが電動車としては安価であったことから市場ではポジティブに評価され、「日本カー・オブ・ザ・イヤー2022-2023」で軽自動車初の大賞を獲得した。
三菱自は今から14年も前の2009年に軽BEV「アイミーブ」を世に問うたメーカー、日産はBEV、PHEV(プラグインハイブリッドカー)、ハイブリッドカーといったクルマの種類の壁を越えて部品共有化を進める電動化の急先鋒である。軽自動車は電動化に対応できず消えるという見方も少なくなかった中、高価とはいえ早くも現実的な軽BEVを出せたのはそんな両社の連携のたまものといえる。
一方で心配なこともある。車体が小さく大型電池を積めない軽BEVの航続性能や急速充電は果たして実用に足るのかという点だ。実際、サクラ/eKクロスEVのバッテリーパックの総容量は20kWhと、日産の普通車BEV「リーフ」のバッテリーパック40kWhの半分。リーフですら充電に苦労することがあるのに、その半分となると性能がやはり気がかりである。
何事も実際に試してみなければ本当のところはわからない。折しも今はBEVが苦手とする冬で、実力値を厳しめに見るにはうってつけだ。ということで、昨年末にeKクロスEVを700km近く走らせてみて商品性を検証してみた。
ロードテスト車は上級グレードの「P」にADAS(先進運転支援システム)「マイパイロット」やカーナビなどのオプションを盛った豪華仕様。走行エリアは首都圏および北関東で、総走行距離681.0km。1~2名乗車、エアコンAUTO。気温は最高でも10℃に届かず、最低はマイナス3℃という環境だ。