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地球から6500光年離れた「わし星雲」の中にある星形成領域、通称「創造の柱」を映したハッブル(左)とウェッブ(右)の画像。ウェッブの画像では、星間ガスと塵の先端に生まれたばかりの赤い星が見える(提供:NASA, ESA, CSA, STScI, and Alyssa Pagan (STScI)/CNP/Abaca/アフロ)

(文:五十嵐杏南)

話題になった科学ニュースの中から「銀河の超絶美画像」「最期の走馬灯」「昆虫サイボーグ」「音楽にノリノリのネズミ」など10個をピックアップ。科学で振り返る2022年。

 毎年、想像を超える新発見や技術の進展があることが、科学ニュースの醍醐味といえる。2022年に話題になった科学ニュースのうち、まずは「インパクト大」の衝撃ニュースを4つ紹介したい。

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の「超絶美画像」大公開

 2021年12月、NASA(米航空宇宙局)の次世代望遠鏡である「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」が打ち上げられた。25年以上にわたって活躍した「ハッブル宇宙望遠鏡」の後継機で、開発に20年以上の歳月と1兆円相当を超える費用がつぎ込まれた一大プロジェクトだ。ハッブルが主に目に見える光を観察する光学望遠鏡だったのに対して、ウェッブは赤外線望遠鏡。限りなく遠い宇宙で、より暗い天体を観測するのに向いている。

 そんなウェッブ宇宙望遠鏡がとらえた画像は、2022年7月以来数回にわたり公開されてきた。画像は、人類が見た中で一番古い銀河系や、二つの銀河系が衝突する姿、星が生まれようとしている姿など、天体学者も驚くようなもの、ため息が出るほど美しいものばかりだ。

 今後は今まで以上に遠くの天体の観測を通して、宇宙の昔の姿がより鮮明に浮かび上がることが期待される。さらには、赤外線で遠い惑星の大気を観測し、生命活動に適した環境があるかどうかも調査されていく。

5つの銀河が接近している「ステファンの五つ子銀河」の画像(提供:NASA, ESA, CSA, STScI, Webb ERO Production Team/ロイター/アフロ)

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