防衛費を国債でまかなっていいのか

 今回の防衛費増をめぐって、岸田首相が増税でまかなうという方針を明らかにした際、安倍派やその周辺から反対の声があがった。

 今年4月、安倍晋三元首相が派閥の会合で、「防衛予算は次の世代に祖国を残していく予算だ。私たちが今求められているのは予算において国家意思を示していくことだ」と述べ、国債で防衛費をまかなうべきだと主張していたからだ。

 しかし、変な理屈だ。だったら、子ども予算も、社会保障制度の予算も、教育の予算も、すべて次の世代に祖国を残していくための予算である。防衛費だけがそうなのではない。

 石破氏も“国債で防衛費をまかなう”という考えに対しては、「これは国家の根幹たる安全保障を賄うにはふさわしくない、ということを、政治として語らなければならないと思います。国防を安易に国債で賄うことは、国民の安全保障に対する意識を弛緩させることになりかねません」と厳しく批判し、「戦前の日本は戦時国債を乱発し、国民に塗炭の苦しみを強いました。その反省から赤字国債を原則禁止とした財政法4条が生まれたのです。過去の間違いを繰り返してはなりません」と指摘している。全面的に同意する。

 この点では岸田首相も、党内の増税への反発に対して、「1年前から議論は始めていた。最初から増税も念頭にあった。国債でミサイルや戦闘機を買うなんて、平和国家日本の矜恃(きょうじ)としてありえねえ」と語っていたという(12月17日付朝日新聞)。果たしてこの矜恃を貫けるかどうか。

 香田氏も「国債という麻薬のようなものを平時に使えという主張があることは信じられません」「今年の7月に地方の自衛隊幹部が、社会保障費なども必要な中で防衛費だけが特別扱いされるのは無条件で喜べない、という発言をして叩かれましたが、国の財政や経済という広い視野から発言した幹部がいることを、誇りに思います」と語っている。安倍派の議員に、これらの意見を学べと言いたい。