香田氏は、敵基地攻撃能力についても、「方向性には同意します。(略)周辺国はミサイル技術を高度化させており、変則軌道で飛ぶ大量のミサイルが発射された場合、今の日本の防衛網では対応しきれません」と述べる一方で、「奇襲攻撃の着手に対し、政府がどう存立事態を認定し、防衛出動をかけるのかが、明確ではありません」と指摘する。

 確かに香田氏も指摘するように、奇襲ミサイル攻撃への対応は24時間365日行わなければならない。米軍や韓国軍との連携など、その運用は国民合意のもとで事前にはっきりさせておかねばならないという。もっともな指摘である。場合によっては戦争になりかねないことなのだ。

 問題は、果たして岸田首相らがそこまで熟議を重ねてきたのか? ということだ。香田氏は、「言い方は悪いが、43兆円という砂糖の山に群がるアリのようになっているんじゃないでしょうか」とも語っている。

 敵基地攻撃については、元自民党幹事長の石破茂氏も『月刊日本』(2023年1月号)で次のように語っている。

〈日本には相手国が武力攻撃に着手したかどうかを独自に判断できる能力がないという問題もあります。攻撃対象の情報を収集するには、低高度の周回衛星が50基ほど必要だと言われています。日本はこれほどの衛星をもっていません〉

 さらに石破氏は、アメリカの情報に頼ったとしても、その情報が間違っていることもあり、結果として日本が先制攻撃をしたことになってしまいかねない、と指摘する。たとえ日本に情報収集能力があったとしても、日本一国で反撃能力を行使できるかどうかは別問題であり、「あらゆる可能性をきちんと検証し、シミュレーションしておかなければ、いざというときに使い物にならないでしょう」と警告している。