メルケルが暴露「ミンスク合意は“時間稼ぎ”が目的だった」
このミンスク合意について、ドイツのメルケル前首相は、12月7日に公開されたドイツ紙「ツァイト(Die Zeit)」のインタビューで、「ウクライナが軍事力を強化するための『時間稼ぎ』を狙ったものだった」と語った。メルケルによれば、「2014年から15年にかけてのウクライナの軍事力は今ほどではなかった」ので、軍事力強化には時間が必要だったと述懐している。
これに対して、9日、プーチンは、「ドイツ政府は誠実に行動しているとずっと思っていたが、予想外のことで失望した。メリケル氏の言葉は、ロシアが人々を守るために特別軍事作戦を始めたことが正しかったことを証明するものだ。欧州諸国でさえ、どの国も合意を履行しようとせず、ウクライナを兵器で満たそうとしていただけだった」と述べた。そして、「このような発言の後では、どうすれば合意できるのか、合意する相手はいるのか、保証はあるのかという疑問が湧いてくる」と批判した。
プーチンは、「ウクライナ紛争を終わらせるためには最終的には合意を締結する必要がある」と述べている。しかし、クリミア半島の帰属一つをとっても、ロシアとウクライナの主張は真っ向からぶつかっており、合意に至る可能性はほとんどない。
戦争は長期化する
13日には、ペスコフ露大統領府報道官は、ウクライナが領土に関する新たな「現実」を受け入れる必要があると強調して、「クリスマスまでに軍隊を撤退させるべきだ」というゼレンスキー提案を拒否した。ペスコフは、「ウクライナは、これまで進展した現実を考慮する必要がある」と述べ、クリミアのみならず、東南部4州のロシアによる併合を「新たな現実」であることを認めるようにゼレンスキーに迫っている。そして、「こうした新しい現実を考慮しなければ、いかなる進展もありえない」と釘を刺したのである。
ここまで、両者の主張が食い違えば、合意のしようがない。
戦争が長期化することを覚悟しなければならない。西側から武器支援を含む多くの援助がウクライナに届いており、ウクライナ軍が容易に停戦に応じることはない。また、ロシア側も、老朽化した兵器まで駆り出す苦境にあるとはいえ、継戦能力を備えた核軍事大国である。そして、「母なる大地」を守ろうというナショナリズムに訴える戦意発揚の宣伝は大きな効果を持つ。
バイデン大統領が指導力を発揮しないかぎり、この戦争は続いていく。