こうして、現時点で、ウクライナ軍は、当初ロシア軍によって占領された地域の約半分を奪還することに成功している。

 つまり、ロシア軍は守勢に立たされており、それは、国内の強硬派からも、戦争反対派からもプーチンが批判に晒される状況を生んでいる。

 そのために、プーチンは恒例の年末記者会見を中止し、年次教書演説の日程も決めない状況が続いている。記者からの質問に自信をもって答えることができないからである。

NATOはウクライナに「ロシア本土への攻撃」をせぬよう要請

 NATOは、ウクライナに軍事支援はしても、ロシアとの直接的な軍事対峙を避けるようにしてきたし、ウクライナに対しても慎重な対応を求めてきた。

 たとえば、ロシア領土に到達するような長距離射程の武器の供与は差し控えた。また、ウクライナが求めた飛行禁止区域の設定も拒否した。もしNATOがウクライナ上空にこの区域を設定すれば、侵入してくるロシア軍機をNATOが撃墜せねばならなくなる。

 それはNATO加盟国ではないウクライナの戦争にNATOが巻き込まれることを意味し、ヨーロッパでの全面戦争に発展する恐れがあるからである。

 NATOはまた、ウクライナにロシア本土への攻撃を差し控えるように要請してきた。それは戦争の拡大、そしてロシアが核兵器の引き金を引く可能性を高めるからである。

 ところが、12月5日、ウクライナは無人機を使って、ロシア領内の空軍基地などを攻撃したのである。この攻撃の意味と影響については、前回の本コラムで解説した(参考:https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73064