(舛添 要一:国際政治学者)
ウクライナでは、戦争が続く。ロシアが発電所などのエネルギー関連施設を攻撃したため、各地で停電となり、暖房が使用できないなど、人々は厳しい生活を強いられている。欧米からの武器支援で、ウクライナは反撃しており、遂にロシア領内の基地までも攻撃した。
「敵基地攻撃能力」を発揮
12月5日、ロシアの2つの空軍基地で爆発事故が起こったが、これはウクライナの無人機による攻撃であった。
1つは、リャザン州のディアギレボ空軍基地で、モスクワから南東200km、キーウから800kmの位置にある。
もう一つは、サラトフ州のエンゲリス空軍基地で、キーウから1000km以上離れており、ウクライナ国境からも500kmの場所にある。この基地には30機以上の爆撃機が配備されており、そのうち長距離戦略爆撃機ツポレフ95が2機、損傷した。
さらに、6日には、ウクライナ国境から90kmの距離にあるクルクス州の飛行場の石油貯蔵施設が無人機による攻撃を受け、火の手が上がった。これもウクライナの無人機によるものである。
さらには、この基地は、ウクライナ空爆の拠点となっており、ウクライナとしては、この拠点に攻撃を加えることは空爆を食い止める自衛の措置だという主張である。
しかし、越境してロシア本国を攻撃することは、戦争の拡大に繋がりかねない。そこで、アメリカをはじめ、NATO諸国は、ロシア領に到達するような射程の長い武器をウクライナに供与することを拒んできた。あくまでも、ウクライナ国土の防衛に資する目的に特化した兵器に限定してきたのである。
ブリンケン米国務長官は、今回のウクライナの無人機による攻撃に関して、「我々は、ウクライナに対しロシア領内への攻撃を促していないし、できるようにもしていない」と明言し、アメリカの軍事支援はあくまでもウクライナの自衛を支援するためであることを強調した。