資本提携の見直し協議に入っているとみられる日産自動車と仏ルノー(写真:ロイター/アフロ)

(井元 康一郎:自動車ジャーナリスト)

フランス政府が仕掛けた「ルノー・日産経営統合」

 一時は世界販売1000万台超にまで権勢を拡大しながらあっという間に凋落、苦境に立たされている仏ルノー、日産自動車、三菱自動車の三社連合。そのコアとなるルノーと日産との間で資本関係の見直し交渉が行われている模様だ。

 報道によると、事の発端はルノーが日産に対して欧州に設立する電気自動車専業の新会社への資本参加を求めたこと。それに対して日産は現在43%であるルノーの出資比率を日産のルノーに対する出資比率と同じ15%にまで引き下げることを要求。ルノーも応じる姿勢を見せているという。

 近々この見直しに関して一定の結論が発表される見通しだが、対等出資が実現したあかつきに三社連合はどう変化していくのだろうか。

 まず、日産が出資比率の見直しを求める背景について簡単に触れておこう。直接的な事の発端は“西川クーデター”で放逐されたカルロス・ゴーン氏時代にフランス政府が仕掛けたルノー・日産経営統合にある。

 ルノーが日産の筆頭株主となり、ルノー・日産アライアンスがスタートしたのは1999年。その発表の際、ルノー会長のルイ・シュヴィーゼル(シュヴァイツァー)氏と日産社長の塙義一氏は「両社はあくまで対等。21世紀における新しい企業連合のあり方を目指す」と強調していた。当時は出資格差のある企業同士が対等の関係を目指すという事例がほとんどなかった時代だっただけに、そんなことが現実に可能なのかと懐疑的に見る向きが多かった。

 そんな船出のアライアンスだったが、ここまでの23年の歩みをみると、両社は完全とは言えないものの、まあまあ上手く関係を保ってきた。今でこそ資本による支配によらない協業は一般的になっているが、当時としては珍しいくらいの成功例だった。

 ルノー・日産アライアンス発足と同時期にダイムラー・ベンツ(現メルセデスベンツグループ)がクライスラーを吸収合併することで誕生したダイムラー・クライスラーが10年も経たずに瓦解したのとは対照的である。ルノー、日産双方のトップを務めたゴーン氏がアライアンス発足時の目標に忠実で、徹頭徹尾Win-Winを掲げていたことによるところが大きいと言える。