「ワゴンRスマイル」のフロントビュー。先発のライバル、ダイハツ「ムーヴキャンバス」に比べて全高が約5cm高い(筆者撮影)

(井元 康一郎:自動車ジャーナリスト)

軽自動車販売で唯一気を吐く「ワゴンR」シリーズ

 世界的な部品不足、ウクライナ紛争、急激な円安ドル高など、自動車業界にとって激動が続く2022年。4~9月の6カ月の国内新車販売台数は前年同期比6.1%減の192万3489台。下半期は各社とももう少し頑張ることが予想されるが、このままのペースでは年間400万台割れという由々しき事態である。

 総体的に元気なのは75万593台を売った軽自動車で、マーケット全体に占める割合は約4割にまで上昇した。が、その軽自動車も同じ時期としては東日本大震災に見舞われた2011年以来の少なさで、販売首位のホンダ「N-BOX」をはじめほとんどのモデルが前年同期比割れという有り様だった。

 そんな中、前年同期比41.6%ものプラスと唯一気を吐いたモデルがある。スズキのトール(背高)ワゴン「ワゴンR」である。

 このところ軽自動車カテゴリーでは車高170cm超でスライドドアを装備したスーパーハイト(超背高)ワゴンと呼ばれるタイプが人気を博しており、車高160cm台のトールワゴンは傍流となっていた。昨年9月、スズキはそのワゴンRにスライドドアを装備した「ワゴンRスマイル」を追加。大幅な販売増はその効果によるものだ。

スライドドアを装備。後席の間口はスイングドアに比べて狭いが、狭い駐車場が多い日本ではスライドドア需要が根強い(筆者撮影)

 スライドドアを装備したトールワゴンで人気を博した先例に、ダイハツが2016年発売した「ムーヴキャンバス」がある。フォルクスワーゲンのオールドモデル「タイプ2ミニバス」を思い起こさせるお洒落な2トーンカラーと可愛いフェイスが消費者に受け、ヒットモデルとなった。こちらも今年フルモデルチェンジされたが、外観については第1世代をほぼ踏襲したほどの定番商品ぶりである。

 ワゴンRスマイルがそのムーヴキャンバスを5年後れで追うという構図だが、果たしてどのようなクルマなのか。3500kmあまり走って商品特性を徹底的に検証してみた。