司法長官は60~90日以内にトランプ訴追か
米中間選挙が11月8日に投開票される。
すべての世論調査が、上院はともかくとして下院は共和党が過半数を獲得すると予想している。
中間選挙はジョー・バイデン大統領(79)の2年間の政治への審判と同時に、政権奪還を狙う「手負いの獅子」、ドナルド・トランプ前大統領(76)に対する“国民投票”でもある。
2020年の大統領選で勝ったのは自分だと言い、退任後、次々と出てきた国家機密文書秘匿、不正納税、議会証言拒否さらには米議会乱入事件の教唆などの疑惑(訴追)を背負ったトランプ氏を共和党支持者だけでなく無党派層を含む有権者がどう見るか、その判断が下される。
中間選挙は、現職大統領の与党が負ける前例が多い。
現政権にとっては、過去2年間の政治に対する「通信簿」が中間選挙だ。国民を大満足させる政党も政権もない。
一党独裁国家ならいざ知らず、政権与党に辛い点数をつけるのは民主主義国家では当然だ。
加えて、バイデン氏の支持率は歴史的なインフレ、ガソリンをはじめとする物価高騰のあおりを受けて低迷している。
さらに10年に1度行われる選挙区の区割り*1は、民主党に不利な結果を招き、厳しい選挙戦を強いられている。
民主党が議席を大幅に減らすのは想定内のシナリオなのだ。
「共和党が勝っても、トランプ氏の疑惑に有権者が目を瞑ったわけではないことは肝に銘じておくべきだ」(米シンクタンク上級研究員)
*1=今回の選挙では、10年に1度の国勢調査に基づき選挙区の区割りが変更された。人口比例で配分される選挙区の線引きは各州が定めるが、新区割りでは民主党に有利な選挙区が6つ増えた一方、激戦区は6つ減った。当選がほぼ確実な選挙区では、予備選を勝ち抜くため候補者の主張が極端になり、反対派から「極右」「極左」とレッテルを貼られる議員を生む土壌になっている。
民主党にとっては、そうした状況を覆す(あるいは少しでも現有勢力を守る)には、「トランプ氏のヘソの緒を断ち切れない共和党」に対する有権者の批判票がどのくらい集まるかがカギだ。
事実、選挙後60日から90日の間にメリック・ガーランド司法長官はトランプ訴追に踏み切るだろうといった観測が首都ワシントンでは広がっている。
これに共和党、特に一部トランプ支持強硬派がどう出るか。
司法長官周辺には「政治的暴力」が発生するのも覚悟で訴追を断行すべきだとの声が強いという情報もある。
「何が起ころうともトランプ氏の機密文書秘匿にはスパイ罪が適用される。それを司法が見逃すことはできない」というのである。