失敗すれば逃げ場なし
中国共産党第20期中央委員会第1回総会(1中総会)は10月23日、習近平総書記(国家主席)を再選したほか、最高指導部を構成する政治局常務委員に習近平氏の側近を配置する「習近平中央集権」を発足させた。
「新冷戦」下の米国は、少なくとも5年間は続く習近平体制をどう見ているか。
主要シンクタンクの外交問題評議会(CFR)、戦略国際問題研究所(CSIS)、ヘリテージ財団、ユーラシア・グループは、第一線の中国専門家たちが習近平政権の特質、今後の外交、国内政策について分析した論文を公表した。
これら論文をかいつまんで要約すると、以下のようになる。
一、習近平氏は1中総会で「2つの確立」(習近平氏の核心としての地位、その政治思想の指導的地位)を手中に収め、絶対権力を確立した。
二、党内外の「敵」すべてを排除した習近平氏の勝利は、途中、半ば連行されるように退席した胡錦涛前総書記のみじめな姿にシンボライズされていた。
三、これで習近平氏は「行政全般を取り仕切るチェアマン」(Chairman of Everything)になったが、逆に失敗すれば逃げ場がない。内政、外交すべての責任を負わねばならない。
四、後継者を作らないことで、習近平氏に万一のことがあった場合、中国共産党は鄧小平氏の死去の時と同じような混乱に陥る恐れがある。
五、外交はこれまで以上に積極的に自己主張し、言動でそれを示す。「核心的国家利益」追求のためには妥協を許さない。
六、習近平氏は負ける戦争はしない。台湾統一は勝つ態勢が整うまで武力行使には出ない。
長いこと対中外交を担当してきた米外交官の一人、J氏は習近平独裁体制を比喩して、英国の詩人、パーシー・ビッシュ・シェリーの詩、『オジマンディアス』*1を筆者に送ってきた。
ギリシャ悲劇に出てくる「オジマンディアス」だ。
習近平氏に、現実を無視し過度な誇りと野心を貫こうとして国家を破滅に陥れたラムセス2世の姿を見たのだ。
*1=オジマンディアス(Ozymandias)はかって「王様の中の王」と偉勲を誇ったエジプト新王国のファラオ、ラムセス2世。「巨大な胴を失い、歪んだ微笑を浮かべて砂に埋もれて石となった」情景を描いたソネット(欧州の定型詩)。