(英エコノミスト誌 2022年10月22日号)

超低金利時代のつけが住宅に襲いかかっている(RalphによるPixabayからの画像)

金融システムを吹き飛ばしはしないが、恐ろしい事態になる。

 この10年間、住宅を所有することは、あぶく銭が手に入ることを意味した。住宅価格が何年も着実に上昇し、パンデミックになると奇妙な急騰を演じた。

 しかし今、もし自分の財産が不動産に投じられているなら、不安を覚えるときだ。

 住宅価格は今、裕福な9カ国で下落している。

 米国での価格下落は今のところ小幅だが、世界トップクラスの荒っぽい市場では、動きはすでに劇的だ。

 マンションブームに沸いたカナダでは、住宅価格が今年2月に比べて9%安くなった。

 インフレと景気後退が世界に忍び寄ってきていることから、住宅価格はさらに大幅な調整局面を迎える公算が大きい。

 不動産仲介業者でさえ憂鬱になっているほどだ。

 2007~09年のようにグローバルな銀行をいくつも吹き飛ばす事態にはならないが、景気の悪化が深刻化し、財産を減らす人々が現れ、政治的な嵐が始まるだろう。

利上げが住宅ローンを直撃

 騒動の原因は金利の急上昇にある。

 米国では住宅購入を検討中の人々が、期間30年の住宅ローン固定金利が年6.92%に上昇するのを恐れおののきながら見守っていた。

 ほんの1年前の2倍超、2002年4月以来の高水準だ。

 パンデミック中のミニバブルは、金利の引き下げや景気刺激策、人口の少ない郊外への移住需要増加によってあおられた。

 ここへ来て、そうした要因のほとんどが逆回転を始めている。

 例えば、1年前に月1800ドルを30年物住宅ローンの支払いに充てられた人がいたとしよう。当時の金利水準なら、42万ドル借りることができた。

 今では月1800ドルの返済では28万ドルのローンしか借りられない。1年前に比べて33%も少ないのだ。

 ストックホルムからシドニーに至るまで、借り手の購買力が急低下している。おかげで初めての住宅購入が難しくなっており、需要を押し下げている。

 これではすでに住宅を持っている人の経済状況も悪化しかねず、不幸にして自宅の売却を迫られる人も出てくるかもしれない。