(英エコノミスト誌 2022年10月8日号)

ロシアのウクライナ侵攻を受けて米国のガソリン価格は一時、歴史的な高さに達した(写真は7月13日フロリダ州マイアミのスタンド、写真:ロイター/アフロ)

政府と中央銀行の間で大規模なリバランスが進んでいる。

 数カ月前から金融市場が荒れている。世界経済にストレスがかかっている兆候も増えている。これは弱気相場と迫りくる景気後退の普通の兆しだと読者は思うかもしれない。

 だが、本誌エコノミストが最新号の特別リポートで示したように、こうした動きは世界経済に新たなレジームが誕生しつつあることも告げている。

 第2次世界大戦後のケインズ主義の台頭や、1990年代における自由市場やグローバル化への旋回に匹敵するかもしれない重大な変化だ。

 この新しい時代には、裕福な国々が2010年代に陥った低成長の罠から抜け出し、人口高齢化や気候変動といった大問題に取り組むかもしれない。

 だが同時に、金融市場のカオスや中央銀行の破綻、歯止めのきかない政府支出といった深刻な危険ももたらす。

数十年ぶりの大異変、平穏な時代の終わり

 市場で起きている騒ぎは、ここ30年間見られなかった大規模なものだ。

 世界全体のインフレ率はほぼ40年ぶりに2ケタに乗っている。

 対応が遅れた米連邦準備理事会(FRB)は1980年代以来の速いペースで政策金利を引き上げており、米ドルは20年ぶりの高値をつけ、米国以外の国々でカオスを引き起こしている。

 投資ポートフォリオを運用したり年金に加入したりしている人にとって、今年は恐ろしい年になっている。

 世界の株価はドル建てで25%下げ、少なくとも1980年代以降では最悪の年だ。国債に至っては1949年以来のひどい成績になろうとしている。

 およそ40兆ドルもの損失が発生しているうえ、グローバル化が退却に向かい、ロシアによるウクライナ侵攻後にエネルギー供給システムに亀裂が入っていることから、世界の秩序がひっくり返りつつあるとの不安感が漂っている。

 これらはすべて、2010年代の経済的な平穏の時代が決定的に終わったことを示している。

 2007~09年の世界金融危機の後、裕福な国々のパフォーマンスは弱々しいパターンをたどるようになった。

 民間企業の設備投資は巨額の利益を計上している企業でも伸び悩んだ。

 一方、政府がその穴を埋めることもなく、大手証券リーマン・ブラザーズ破綻後の10年間で社会資本ストックの対国内総生産(GDP)比は世界中で縮小した。