中絶を選択する権利を認めた1973年の「ロー対ウェード判決」を最高裁が覆したこともあり、民主党は盛り返したが・・・(写真:AP/アフロ)

米中間選挙が11月8日に迫っている。これまでのところ、バイデン氏率いる民主党にとって厳しい情勢が伝えられている。今回の選挙はその後の米国政治をどう左右し、どんなシナリオが想定されるのか。2024年大統領選に向け、トランプ前大統領はどう動くのか。米国政治に詳しい、上智大学総合グローバル学部の前嶋和弘教授に話を聞いた。(河合達郎:フリーライター)

――米中間選挙とはどう位置付けられる選挙なのでしょうか。

前嶋和弘・上智大学総合グローバル学部教授(以下、前嶋氏):よく「大統領の信任投票、中間テスト」という言い方をしますが、ちょっと微妙です。なぜなら、大統領の政党がほぼ確実に負ける選挙だからです。

 なぜそうなるかと言うと、大統領の支持者ではない方がより多く投票に行くからです。今の状況だと、民主党支持者より共和党支持者の方が中間選挙で投票に行くのです。そもそも中間選挙の投票率はせいぜい50%くらいで大統領選に比べて低い。

 現状に対して納得できないと思っている、現政権に対して怒っている、そうした方々が投票に行くというのがこれまでの通常の流れです。大統領の政党にとっては、基本的にかなりの逆風です。

前嶋和弘(まえしま・かずひろ)氏 静岡県生まれ。上智大学教授、総合グローバル学部長。専門は現代アメリカ政治外交。上智大学外国語学部英語学科卒、ジョージタウン大学大学院政治学部修士課程修了(MA)、メリーランド大学大学院政治学部博士課程修了(Ph.D.)。主な著作に『キャンセルカルチャー:アメリカ、貶めあう社会』(小学館、2022)、『アメリカ政治とメディア』(北樹出版、2011年)、『危機のアメリカ「選挙デモクラシー」』(共編著、東信堂、2020年)、『現代アメリカ政治とメディア』(共編著、東洋経済新報社、2019年)などがある。

大統領にとって「鬼門中の鬼門」

 第二次大戦以降、中間選挙は20回ありました。平均すると、大統領の政党は「下院マイナス26、上院マイナス4」という議席数になる結果です。米議会の現有議席を見ると、下院は民主党が多数で8議席差。上院は50対50で、(議長である)副大統領が1票持っているので、民主党がかろうじで多数派です。過去20回の平均を当てはめてみると、上下両院とも共和党多数にひっくり返るという形です。