スペック重視に疲れた人々が集まるコミュニティ婚活のめくるめく世界(写真:アフロ)

 外見写真が好みなら瞬時に右にスワイプ、そうでなければ左にスワイプ。希望のスペックに達していれば会い、達していなければ会わない。「選ぶ・選ばれる」という形の既存の婚活に疲れた人たちが、集まってきている場所がある。「コミュニティ婚活」という世界だ。

「婚活」という言葉が世に放たれて、この秋で15年。富山県魚津市が主催したコミュニティ婚活の現場に同行した。(フリーライター:河合達郎)

ご対面の瞬間

 8人の女性たちが、富山湾の方を向いて並び立っている。さっきまでどしゃ降りだった雨はタイミングよくやみ、真っ白な視界は明るさを取り戻してきた。

 続いて、男性陣8人がスタッフに連れられてやってきた。それぞれに立ち位置を指定され、女性陣の背中側に並んだ。みな、手を前か後ろに組んでいる。

 1泊2日、富山県魚津市を舞台にした「婚活ジャーニー」は、北陸自動車道の有磯海サービスエリアがスタートとなった。ここは「恋人の聖地」として知られる。

 10月の3連休初日とあって、特産のマス寿司やかまぼこが並ぶみやげ物エリアは観光客でにぎわっていた。何が始まるのかと、通りがかりにこちらを眺める人もいる。

ご対面の瞬間を知らせる鐘を待つ参加者たち

 恋人の聖地選定を記念して作られた鐘「ミラージュ・ベル」が打ち鳴らされた。それを合図に、女性たちが振り返る。

 ただでさえ緊張するご対面の瞬間に、照れるなと言う方が難しい演出の数々。「どうも」と軽い会釈ののち、しばし固まったり、苦笑したり。「コミュニティ婚活株式会社」の代表・松浦千恵さんがすかさず、男女の間に立ち、その列を引き合わせるようにはたはたと両手を振った。

「チョット、遠いんじゃない?」