(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)
米国のジョセフ・バイデン大統領は40年にも及ぶ長い政治経歴の過程で数えきれないほど多数の虚言を述べてきた。そんな事実を伝える長文の報道記事が、ニューヨーク・タイムズに10月10日、掲載された。この記事はバイデン氏の虚言の数々を「粉飾」「誇張」「加工」といった表現で列記していた。
同紙は長年、民主党を支持しバイデン政権にも宥和的な論調で知られる。それにもかかわらず、中間選挙が4週間足らずに迫ったこの時期に、なぜこの種の報道に踏みきったのか。記事掲載の動機への推測が多様に語られている。
一方、共和党支持を鮮明にするFOXテレビは、このニューヨーク・タイムズの記事に対して「バイデン氏の嘘を“粉飾”などという婉曲な言葉で糊塗する弁解報道だ」と報じ、米国の主要メディア間の党派的対立が改めて露わになった。
ハリケーン被害に対する発言で自らを「粉飾」
ニューヨーク・タイムズのこの記事は、「バイデン氏、物語の最高司令官、しばしば露見する作り話をつむぎ出す」という微妙な表現の見出しだった。副見出しも、「バイデン大統領は自分の政治的独自性を編み出すための粉飾話法の習慣を止めることができない」という、これまた屈折した表現だった。