(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家)

 政治はいつからこんなに卑しくなったのか。そのはしりとなったのは菅義偉氏が総務相時代に創設した「ふるさと納税」だ。菅氏は、「自分を育ててくれたふるさととつながりを持つことを、全国に広められたらと思ってふるさと納税をつくった」などと言っていたが、実態はふるさとでもない自治体に、上等な肉などを貰うために寄付金をするだけのものだ。このどこが「ふるさと納税」なのか。自分が住む自治体の税収を減らすのだから“ふるさと裏切り納税”だろう。

 Gotoトラベルや全国旅行支援もそうだ。支援の費用はすべて税金だ。それがなぜ観光産業だけの支援なのか。観光関連や飲食店が打撃を受けていることは分かる。だが他の業態も多くが大打撃を受けている。そこには支援はない。

 巨額の休業補償費が詐取され、雇用調整助成金でも巨額の不正受給が行なわれていた。10万円給付や5万円給付もそうだ。財政の後先を考えているとは到底思えない。国民はこのやり方の無責任さを見抜いているのだ。

 無責任政治の極みが、マイナンバーカードを作れば2万ポイントをプレゼントするというキャンペーンだ。たしか2年程前にも5000ポイント付与キャンペーンをやったが大失敗だった。“庶民は2万円もやれば、嬉しくなって作るだろう”と考えてのキャンペーンなのだろうが、考えが甘すぎる。私のまわりでも作っている人は少ない。カードを落としたり、紛失したりするのが怖いからだ。私は出版社との関係で作ったが、机の奥深くにしまってある。