(羽田 真代:在韓ビジネスライター)
日本政府が2024年の秋に、紙の健康保険証を原則廃止にすることを発表した。政府のこの発表に日本ではいま賛否両論が飛び交っている。
廃止を反対する人の中には、「紙の健康保険証を廃止してマイナンバーカードを作らせ、国が国民を管理しようとしている」と批判する者がいる。国が国民を管理することは当然だと考える筆者にとって、反対派の意見は理解ができないのだが、筆者の母親も反対派だ。
ただし、彼女の場合は政府から支給される支援金欲しさにマイナンバーカードだけは作成した。保険証と口座の紐づけはしていない。母はカードを作っておきながら、「こうやって個人情報が国に抜き取られる」と政府を批判していた。メディアに洗脳された典型的な老人の例だ。
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ちなみに、母はスーパーなどのポイントを貯めるために、たくさんのポイントカードを持っている。民間企業に個人情報をポンポンと渡しているのに、なぜ国から個人情報を管理されることを嫌がるのか。
国より民間企業の方がよっぽど危険ではないか。
数カ月前、筆者の元に学生時代のアルバイト先から個人情報が流出したことを謝罪する手紙が来た。公的機関でも個人情報流出は時々問題になっているが、民間企業の個人情報流出の場合はあとのフォローが悪い。
筆者が受け取った手紙には、どこにどのようにして流出したのかという経緯が一切書かれていなかった。
何より国はいまも私たちを管理しているし、私たちも確定申告などを通じて国に情報を渡している。個人情報が抜かれるという認識は果たして正しいと言えるだろうか。
前置きが長くなった。
筆者が母のことを理解できないのは、筆者自身が韓国で外国人登録証を受け取り、国が個人を番号で管理するという状況に慣れているからかもしれない。