北朝鮮の戦術核運用部隊が訓練用に発射したとされる長距離巡航ミサイルの画像を見るソウル市民(10月10日、写真:AP/アフロ)

 北朝鮮は今年になって、弾道ミサイルを頻繁に発射している。そのうち極めて重要で、対応が難しいと考える発射は次のものだ。

 朝鮮中央通信10月10日の発表の「9月25日未明の訓練、北朝鮮北西部の貯水池水中発射場で戦術核弾頭の搭載を模擬した弾道ミサイル発射」だ。

1.ミサイル水中発射の詳細

 この時に発射されたミサイルは、「KN-23」(イスカンデル版)を潜水艦(水中)発射弾道ミサイルにしたものだ。

 今回湖水から発射した要領は、潜水艦を陸上から湖に運搬して、発射させたとは考えにくい。

 ミサイルを搭載した水中発射台を湖水まで運搬して、水中に沈め発射したものと考えられる。

 水中発射台を使用した主な発射は、2019年の「北極星3号」と称するものであった。

 水中発射台は、衛星写真を見ると新浦港の埠頭にある新浦級弾道ミサイル潜水艦の近くにあった。かつては、旧ソ連の潜水艦発射弾道ミサイルの実験用であった。

 水中発射台を使った理由は、潜水艦からミサイルを発射すれば、艦内での爆発などの事故が発生する可能性があったことが挙げられる。

 しかも、北極星1・3号のミサイルが大きすぎて新浦級潜水艦から発射もできなかったという事情もある。

 そのために、発射実験用に水中発射台を建造、使用したと考えられる。

 北朝鮮はこれまで日本海の沿岸部で行っていた。その場所と要領を変えて、湖水の中から実施したものである。

 このミサイルは、潜水艦から発射するもの(潜水艦発射弾道ミサイルsubmarine-launched ballistic missile=SLBM)ではないので用語の語源からはSLBMとは呼べない。

 水中発射弾道ミサイル(underwater launched ballistic missile=ULBM)と呼称すべきだろう。

貯水池からのミサイル発射(9月25日)

朝鮮中央通信10月10日

水中発射装置からの発射と潜水艦発射(イメージ)

出典:筆者作成

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