9月21日、部分的総動員令の発動を発表するプーチン大統領(提供:Russian Presidential Press Service/AP/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 9月21日、プーチン大統領は、部分的動員令を発動し、予備役30万人をウクライナでの「特別軍事作戦」に追加投入することを決めた。動員令は第2次大戦後初のことである。この措置は、ネオナチによって抑圧されているウクライナのロシア人を救うためだと説明されている。

 また、東部のドネツク州、ルハンシク州、南部のヘルソン州、ザポリージャ州で、ロシア編入への住民投票を23〜27日に行うと発表した。住民投票の対象地域を「ノボロシア(新ロシア)」と称して、ロシア領であることを強調した。

 さらに、「領土の保全が脅かされれば、領土と国民を守るためにはあらゆる手段を使う」として、プーチン大統領は核兵器の使用もほのめかしている。

 予想外のウクライナの反撃によってハルキウ州を奪還され、ロシア側に焦りが見える。2月24日に始まったロシア軍の侵攻から7カ月、戦争は大きな転機を迎えている。なぜこのような状況になったのか、また今後どのように展開するのかを論じたい。

諜報能力の衰退

 プーチン大統領の誤算は、「特別軍事作戦」が短期に終結しなかったことである。首都キーウ攻撃によって、おそらく1週間以内にゼレンスキー政権が倒れ、傀儡政権が樹立されるというのが筋書きだったはずである。

 しかし、このシナリオ通りにはならなかった。いくつかの理由がある。

 第一は、ロシアの諜報能力に欠陥があったことである。数カ月前から国境地帯で軍事演習を繰り返し、ウクライナに対して圧力を加えていったが、ウクライナの政治情勢、軍事能力について正確な情報がプーチンに届いていなかった。現地に展開するロシア諜報機関の工作員などからは、軍事侵攻に伴う問題点について報告がなされていたはずだが、FSB(ロシア連邦保安庁)のトップはプーチンが喜ぶような情報のみを伝えていたようだ。