半導体産業支援法案「CHIPS法」に署名したバイデン米大統領(2022年8月9日、写真:AP/アフロ)

(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長)

 米国では、半導体の国内製造を促進する法律「CHIPS and Science Act」(CHIPS法)が成立したが、サムスン電子(Samsung Electronics)やSKハイニックス(SK Hynix)など韓国の半導体メーカーが補助金を受け取るかどうか、微妙な状況になってきている。

 また、日本では、半導体工場の新増設の改正法における補助金が、台湾TSMCの熊本工場とキオクシア(旧東芝メモリ)&米ウエスタンデジタル(WD)の四日市工場に投入されることになった。しかし、この補助金を投入しても日本の半導体のシェアはほとんど上がらない。

 さらに、日本と米国が2nmのロジック半導体を2024年までに共同開発し、2025年から日本で量産すると経済産業省が発表しているが、現実的に全く不可能であり、正気の沙汰とは思えない。

 本稿では、これらの問題の詳細を論じる。最初に筆者の感想を述べると以下のようになる。

 米国のようにあまりにも自己中心的な政策をゴリ押しすると、他国の半導体メーカーは離反してしまうかもしれない(もしかしたら補助金をインテルなど米国メーカーだけに支出するための狙いなのか?)。

 また、何も分かっていない日本のキャリア官僚が政策を立案すると、全く効果が上がらない。その上、「日本が2025年から2nmを量産する」などという、およそあり得ない噴飯物の政策になってしまう。これは世界的な恥さらしであり、頼むからこういう政策を立案しないでもらいたい。