(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長)

半導体市況に異変

 2021年の世界半導体出荷額および出荷個数は、いずれも過去最高の5530億ドルおよび1兆2021億個を記録した(図1)。そして、世界半導体市場統計(WORLD SEMICONDUCTOR TRADE STATISTICS、WSTS)は6月7日、今年(2022年)の世界半導体出荷額が16.3%成長して6465億ドルになるとの予測を発表した(EE Times Japan、2022年6月13日「強気予想だったWSTSの2022年春季半導体市場予測」)。

図1 世界半導体の四半期ごとの出荷額と出荷個数(2022年は予測値)
出所:WSTSのデータを基に筆者作成

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 もし、この予測通りに世界半導体市場が成長し、半導体の平均価格が変わらなかったとすると、2022年の世界半導体出荷個数は1兆4053億個になる。現在、世界人口が約80億人であるから、2022年は世界平均で、1年間に1人当たり176個の半導体を約80ドル(1ドル=130円換算で約1万400円)で購入することになる、などと筆者は机上計算を行っていた。

 ところが、急成長していた半導体市場にブレーキがかかり始めた。WSTSは2カ月前までの実績値を発表するが、そのデータを使って2022年6月までの四半期ごとの世界半導体出荷額と出荷個数をグラフにしてみた(図2)。すると、出荷額も出荷個数も、2021年後半に、既にピークアウトしていることが明らかになった。

図2 世界半導体の四半期ごとの出荷額と出荷個数(~2022年Q2)
出所:WSTSのデータを基に筆者作成

 そこで本稿では、いつ、なぜ、半導体の急成長が止まることになったのかについて分析を行う。そこから導き出される結論は、世界半導体市場における2020年から2022年にかけての急成長は、「コロナの特需」だったということである。そしてこれは、過去から何度も繰り返されている「シリコンサイクル」の一現象に過ぎないと言える。したがって、来年2023年は半導体不況に突入するかもしれないが、2024~2025年以降に再びプラス成長に向かうだろう。