強襲揚陸艦「トリポリ」を飛び立った「F-35B」戦闘機(8月20日フィリピン海で撮影、米海軍のサイトより)。トリポリの排水量は約4万6000トン

「米国防高等研究計画局」と密接な関係

 米国防総省と独占契約し、同総省機関と密接な研究調査協力関係を持つ「米戦略予算評価センター」(Center for Strategic and Budgetary Assessment=CSBA)が中国人民解放軍が8年後には空母5隻、弾道ミサイル搭載潜水艦10隻を配備すると予測した。

https://csbaonline.org/uploads/documents/CSBA8310_(Chinas_Choices_report)_FINAL_web.pdf

https://news.usni.org/2022/08/18/chinas-navy-could-have-5-aircraft-carriers-10-ballistic-missile-subs-by-2030-says-csba-report

 これにより、中国は台湾を軍事的に制圧できる海軍・空軍力を確保、2030年にはいつでも台湾侵攻できる態勢が整うことを意味する。

 中国の空母戦略については、これまで中国の軍事専門家が「海軍が中長期的任務を果たすには空母を6隻から7隻保有すべきだ」と主張するなど「すべき論」が飛び交っている。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2022072500477&g=int

 だが、こうした「すべき論」は中国人民解放軍が提供した情報を参考に一部軍幹部の意向を反映させたものと思われるが、あくまでも一軍事専門家の意見である。

 今回公表されたCSBA報告書は、中国の空母建造能力や国防費全体に占める研究開発費や予算上の制約などすべての客観的データを加味した「戦略的選択アプローチ」(Strategic Choice Approach=SCA)*1による予測という点で異なっている。

「その手段としてコンピューター化した『戦略的選択ツール』(Strategic Choice Tool)を導入、科学的でテクニカルな分析を試みた」(ジャック・ビアンキCSBA主任研究員)という。

*1=国防計画の策定においては要求は多様化し、複雑な利害関係が生まれ、意思決定するにあたって考慮しなければならない項目は多岐に及んでいる。 そのため従来の理論的、定型的計画手法では対応し切れないような状況が生まれつつある。これに対応するのが「戦略的選択アプローチ」で、その具体的手段が「戦略的選択ツール」だ。