トランプ前大統領の前妻、イバナ・トランプさんの葬儀に出席した娘のイバンカさんと夫のジャレッド・クシュナー氏(7月20日、写真:ロイター/アフロ)

 ハーバード卒、逆玉の輿、「虎の威を借りた男」、ジャレッド・クシュナー前大統領特別顧問(41)*1

 祖父はホロコーストの生き残りで九死に一生を得て、米国の地を踏んだユダヤ人移民。不動産業者だった父親は、違法行為で実刑判決を受けて刑務所に収監された。

 厳しい戒律を守っている正統派ユダヤ教徒だ。

 才色兼備で億万長者の娘イバンカを仕留め、大統領になった不動産王の義父、ドナルド・トランプ氏の虎の威を借り、30代で権力を思いのままにした男だ。

 メディアを避け、その「素顔」はほとんど知られていない。

 そのクシュナー氏が8月23日、ホワイトハウスでの4年間を振り返った回顧録を発売した。

*1=ジャレッド・コーリー・クシュナーは、実業家。トランプ大統領の下で4年間、大統領上級顧問を務めた。不動産開発企業クシュナー・カンパニーズ、『ニューヨーク・オブザーバー』紙の元オーナー。2003年にハーバード大学を優等で卒業、2007年にニューヨーク大学経営大学院でMBA、同法科大学院で法務博士号を取得。ロバート・モーゲンソー・ニューヨーク地区検事のインターンを経て、2004年に不動産業の父親が脱税、証人買収、選挙資金の違法献金など計18件の訴因で2年間の実刑判決を受けたため、事業を引き継いだ。

修辞学的に不適切な本のタイトル

Breaking History: A White House Memoir By Jared Kushner Broadside Books, 2022

 タイトルは「Breaking History」。「Making history」とか、「Rewriting history」といった表現はあるが、「Breaking history」なんて聞いたことがない。

 隣組の元高校の英語教師J氏は筆者にこう講釈してくれた。

「奇をてらった表現だが、学校で使えば教師は罰点をつける。おそらく『Making History with breaking news』をブレンドしたのだろう」

 アマゾンから届いたばかりの本書をパラパラと読み始めた。492ページの大作だ。